演 題 JavaTMを使用した化学研究支援ソフトウエアMolWorksTM
発表者
(所属)
○後藤成志,アンディスタビングス,田島澄恵,長嶋雲兵 (べストシステムズ・お茶大院・融合研)
連絡先 茨城県つくば市千現 2-1-1(株)ベストシステムズ
TEL:0298-60-7080, FAX:0298-60-7081 
E-mail:
WWW : http://www.molworks.com
キーワード JavaTM, Property Prediction, Machine Independent, Molecular Orbital Calculation
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
機種を問わず同じ機能が気軽に使えるソフトウエアの開発を目指した.Ver.1.0では分子の簡単な構築機能と分子軌道計算のためのインターフェースを準備した.さらに,Joback法とそのパラメータをNeural Network法を用いて改良した手法を搭載し,分子の物理化学的物性値の推算を短時間で行なうことを可能とした.
環 境 適応機種名 IBM PC/AT互換機,Power Macintosh,Linux/UNIX machine
O S 名 Windows 98/2000/NT、MacOS8.1以降、Linux、UNIX
ソース言語 JavaTM
周辺機器 Ethernet Adaptor
流通形態
  • 化学ソフトウェア学会の無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス,出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他:
具体的方法

http://www.molworks.com
から評価版のダウンロードが可能,試用後に正規ライセンスの販売を受け付け,CD-Rによる販売も可能

1.はじめに
 新規材料開発を行なうために物質に関する様々な情報が必要となる.たとえば,それらは化学的,物理的,熱力学的および分光学的性質などであり,必要となる情報は開発する材料によって異なる. これらの情報を得る手段としては量子化学計算,物性推算,データベースからのデータ抽出,化学工学計算や実験データの解析など種々のソフトウエアが利用されている.しかし,これらは個々に独立したプログラムであるため,ユーザインターフェースや使い勝手が異なり,すべてを相互補完的かつ効果的に利用することは困難となっている.また,限られた機種でしか動作しないなど,保有資産を有効に活用することの妨げともなっている.
 そこで演者らはJavaを使用して機種依存性がなく,異機種間で同一の操作環境を持つ,化学研究支援ソフトウエアの研究開発を行なってきた.今回はVer.1の機能の概略と今後の開発項目について報告する.

2.プログラムの概要
 本プログラムは画面上でマウスを用いて分子を描画することができるとともに,現行のバージョンではxyz形式のファイルを読み込むことができる.簡易な分子構造最適化機能が内蔵してあるので,簡単な構造最適化がおこなえる.また,可能な分子表示方法は,線描模型と棒球模型がある.次頁図1にプログラム実行中の画面表示の例を示す.
 分子軌道計算をしてはCNDO/2を内蔵しており,分子構造とともに分子軌道の表示が可能である.また,別画面に軌道のエネルギー順位を表示することができ画面内にあるボタンに連動して,表示する軌道を変えることができる.さらに,GAMESS,GAUSSIANおよびMOPACのインターフェースが内蔵してあるので,量子化学計算用の入力ファイルを作成し,同一マシン上あるいはネットワーク上のサーバーで計算することができる.
 分子の物性計算にはJoback法およびNeural Networkを用いてパラメータを最適化したものを採用した.フラグメントごとのパラメータから沸点と臨界定数を計算し,対応状態原理により純物質の融点,密度,蒸気圧,蒸発潜熱,熱容量,標準自由エネルギー,生成熱,表面張力,気体および液体の熱伝導度を推算する.また,混合物の物性としては二成分系の状態図を作成することができる.
図1.実行中の画面の一例

3.今後の開発項目
 分子の表示に関して,現バージョンではJavaの描画機能を使用しているので,制限される部分も多く,いかにも陳腐な感じは否めない.そこで,我々は最近グラフィックス言語として一般化してきているOpenGLを使用することに決め,現在書き換えを行なっている.これもすべてJavaを採用するため,機種依存性は発生しない.これによって,分子軌道の半透明化やシェーディングのかかった分子構造の表示が可能となる.
 また,分子の構築機能に関しては専用のビルダーを,構造のライブラリとともに用意し,合成高分子,タンパク質,糖鎖および核酸分子も簡単に構築できるようにし,結晶構造や表面,界面なども簡単に作成できるようにする予定である.
 量子化学計算に関する項目としては,対応する計算プログラムの種類を増やすとともに,振動解析結果の動画表示など,結果の解析機能も充実させる予定である.さらに,分子力学計算もおこなえるように機能拡張をおこない,できれば独自の力場パラメータも作成したいと考えている.
 物性の推算機能に関して現バージョンでは,推算できる分子構造が限られている,推算の精度が充分でない部分が存在するなどの問題がある.そこで我々はNeural Network法およびGenetic Algorithm自体を組み込み,推算精度の向上および光学異性体の物性の違い,さらには高分子物性も推算することを目論んでいる.

4.謝辞
 開発の過程において,使用感や機能に関する助言をいただいた,物質工学工業技術研究所の松本高利博士,豊橋技術科学大学の後藤仁志助教授,さらにベータ版の段階で使用していただいて,問題点を指摘していただいた多くの方々に感謝します.

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