演 題 化学ソフトウェア学会論文誌の電子出版 −新たな展開−
発表者
(所属)
○中野英彦、山名一成、林 治尚 (姫路工大・工)
連絡先 〒671-2201 兵庫県姫路市書写2167 姫路工業大学工学部応用化学科
TEL:0792-67-4894,FAX:0792-66-8868
E-mail:
キーワード 学術雑誌、電子出版、インターネット、SGML、HTML、TeX、PDF
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
本学会論文誌(Journal of Chemical Software)のインターネットを通じたオンライン公開および印刷体による出版過程の電子化については、昨年度の本研究討論会において報告したが、それ以後の、科学技術振興事業団の「科学技術情報発信・流通総合システム」(J-STAGE)への参加に伴う新たな展開について報告する。
環 境 適応機種名  
O S 名  
ソース言語  
周辺機器  
流通形態
  • 化学ソフトウェア学会の無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス,出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他:未定
具体的方法

 

1.はじめに
 本学会の論文誌(Journal of Chemical Software)は、以前よりHTML形式でインターネットを通じてオンライン公開されてきたが、1997年度より文部省の科学研究費の補助金を受けて、著者による投稿からオンライン公開および印刷体による出版までの全過程を通じて電子化するための研究を開始した。本システムの試験適用は1998年発行の第4巻第2号の一部の論文より開始し、第4巻第3号からは全論文について試験適用を行った。さらに1999年発行の第5巻より本運用に移行するとともに、HTML形式に加えてPDF形式によるオンライン公開も同時に行っている[1]。
 本システムは著者よりフロッピーディスクあるいは電子メールによって投稿された電子化原稿をまずSGML(Standard Generalized Markup Language)文書に変換し、SGML文書からオンライン公開用のHTML文書とPDF文書、および印刷体雑誌制作用のTeX文書をプログラムにより自動的に作成するものである。このうちSGML文書から各種公開用の文書に変換するプログラムに関しては、ほぼ当初の目標を実現できたが、著者から投稿された電子化原稿からSGML文書作成の段階に関しては現状では手作業を必要としており、当初目標としていた自動変換は実現できていない[2 - 4]。
 一方、科学技術振興事業団(JST)は科学技術分野の電子ジャーナルの発信と流通をサポートするための「科学技術情報発信・流通総合システム」(J-STAGE)の開発を行っていることが発表された[5]。そのシステムが完成した場合には、当初目標としていた機能が全て実現されると考えられるので、J-STAGEに参加する事とし、まず我々が開発したシステムによって作成されたPDFファイルのJ-STAGEシステムによる公開を開始した[6]。今後さらに全面的にJ-STAGEのシステムに移行する場合の問題点について検討を行った結果を報告する。

2.現状におけるJ-STAGEへの参加形態
 J-STAGEは各種学会誌が共同で利用する、電子出版に必要なハードウェアとソフトウェアを提供するセンターを目指している[5]。しかし、参加する学会誌に対して画一的なサービスを提供するのではなく、それぞれの学会誌の実状に応じて必要な機能を提供する。現時点では完成されたものではなく開発途上であるので、目指している全機能が全て利用可能となっているわけではない。また、すでに実施している本学会のシステムからの移行が直ちに可能ではないので、まずPDFファイルのオンライン公開の機能について利用することとした。

3.J-STAGE推奨方式による雑誌制作へ移行の際の問題点
 上記のように現状では、電子化原稿から印刷体出版における版下作製および電子出版におけるHTMLファイルおよびPDFファイルの作成過程は我々が開発した独自システムによって行っており、PDFファイルのオンライン公開のみに関してJ-STAGEのシステムを利用している。しかし、今後の進展を考慮すれば印刷体およびオンライン公開のための雑誌作製過程に関しても、J-STAGEが推奨している方式を採用する方がメリットが大きいと考えられる。J-STAGEが推奨しているのは、雑誌作製のためのソフトとしてAdobe社のFrameMaker + SGMLを用い、J-STAGEが提供する学術雑誌のための汎用テンプレートと汎用変換テーブルを利用する方式である。そこで、同方式に移行するにあたっての問題点について検討を行った。
 通常の文章に関してはあまり問題はないので、特殊記号、図、表、化学式、数式について以下に示す。

(1) 特殊記号
現在実施しているシステムではTeXによって版下を作製しているため、TeXが提供する豊富な特殊記号が表示可能である。しかし、FrameMakerではそのうちの一部しか利用できなくなる。この点についての解決法があるかどうか検討中である。

(2) 図
図の挿入に関しては、現在のTeXによる方式よりもむしろ容易であり、特に問題は生じない。

(3) 表
簡単な表であればFrameMakerで対応可能であるが、複雑な表の場合には図として扱う必要があるかもしれない。しかし、これはTeXによる現状の方式でも同様であり特に問題とはならないと思われる。

(4) 化学式
化学式の場合も、ChemDrawによる構造式を図形として貼り込む事になるが、上記の図と同様に処理すればよく、特に問題はないと考えられる。

(5) 数式
FrameMakerにも数式作成機能があるが、必ずしも使い勝手が良くなく、また元来数学論文作成用に開発されたTeXに比べてので表現力も劣るので、これによる数式作成を利用することは得策ではない。TeXによって作製された数式を図形として取り込むなど、TeXとの組み合わせによって解決する方法が無いかどうか検討中である。

4.おわりに
 以上のようにいくらか問題点は残されているが、基本的には投稿された電子化原稿から印刷体および電子媒体による雑誌の作製においては、J-STAGEの推奨する 方式に移行する事は可能であると考えられる。さらにJ-STAGEにおいては、著者による投稿の段階および査読の段階におけるシステムの開発が進行中である。完成すれば参加を検討していきたい。

5.参考文献
[1] URL http://www.sccj.net/CSSJ/
[2] 中野英彦他,化学ソフトウェア学会 ユ99研究討論会講演要旨集,p.52 (1999)
[3] 中野英彦他,第36回情報科学技術研究集会予稿集,p.55 (1999)
[4] 中野英彦他,J. Chem. Software,6(4) (印刷中)
[5] 吉田幸二他,第36回情報科学技術研究集会予稿集,p.59 (1999)
[6] URL http://www.jstage.jst.go.jp/

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