演 題 POV-Rayを用いたレイトレーシング法による高品質三次元分子グラフィックス
発表者
(所属)
吉田 弘(広島大学大学院理学研究科)
連絡先 〒739-8526 広島県東広島市鏡山1-3-1 広島大学大学院理学研究科
TEL:0824-24-7101, FAX:0824-24-0727
E-mail:
キーワード Molecular modeling, Molecular graphics, Ray tracing
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
 我々が開発してきた分子モデリングプログラムMOLDA for Windowsにフリーの3DCG作成ソフトPOV-Rayのデータ形式で分子構造データを出力する機能を追加した。その結果,分子モデルをレイトレーシング法を用いてさまざまな材質(金属・木・ガラス等)で描画可能となった。これによりMOLDAの化学教育や科学イラストの分野への応用の拡大が期待される。
環 境 適応機種名 IBM PC/AT
O S 名 Windows98/NT
ソース言語 Visual Basic 6.0
周辺機器 特になし
流通形態
  • 化学ソフトウェア学会の無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス,出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他:
具体的方法

http://molda.chem.sci.hiroshima-u.ac.jp/molda-j/からフリーにダウンロード可能

1.はじめに
 近年のパーソナルコンピュータの急速な高性能化は,高品位の三次元コンピュータグラフィックス(3DCG)を容易に行なえる環境を与えてきている。特にレイトレーシング法やラジオシティ法といったより写実的な3次元画像を作る技術がパーソナルコンピュータ上で簡単に使えることになることにより,誰もが容易に雲や水の流れ,雨,樹木や草花などの自然現象や,分子などのミクロの世界を3DCGでリアルに表現することができるようになる。さらにPOV-Ray1)のようなレイトレーシング法を用いた高品位の3DCGを可能とするソフトウェアがインターネットからフリーに入手可能となったことは,今後,3DCGを用いた理科教材の開発や,サイエンティフィック・イラストレーション,テクニカル・アートなどの分野に大きな影響を与えるものと考えられる。
 本研究では,レイトレーシング法を用いた高品位3DCGを分子グラフィックス,分子アートに応用することを目的として,我々がこれまで開発してきた分子モデリングプログラムMOLDA for Windows2)に分子構造データをPOV-Rayの形式で出力する機能を追加し,さらに,いくつかの機能を拡張したので報告する。

2.プログラムの拡張機能
 今回,MOLDA for Windowsに追加した機能は次のとおりである。

1.POV-Rayへのエクスポート機能
MOLDAで作成されたデータをPOV-Ray形式のデータに変換する。変換するときに,光源や背景,模型の材質などを設定することができる。

2.元素の色の変更機能
MOLDAで表示される分子の元素の色が自由に変更できるようになり,その結果,POV-Rayでレンダリングするときの原子の色の設定が容易になった。

3.CIF (Crystallographic Information File)のインポート機能
CIF形式のデータ読み込むことが可能になったため,X線結晶構造データをPOV-Rayで表示することが容易になった。

4.Gaussian98による振動解析機能の強化
我々が提唱しているWavenumber_linear Scaling (WLS)法による振動解析を導入した(詳細は第23回情報化学討論会で報告)。

3.POV-Rayでの表示例
 次にMOLDAで作成しPOV-Rayで描画した分子模型図を示す。
figure figure
図1.デフォールトでの空間充填模型図    図2.木を材質にした空間充填模型図 figure figure
図3.金属で作成した空間充填模型図     図4.ガラスで作成した球棒模型図

4.参考文献
[1] 小室日出樹,「POV-Rayではじめるレイトレーシング」,アスキー出版(1999).
[2] 吉田 弘,「分子のモデリング」,サイエンスハウス(1998).

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