演 題 大学基礎教育における計算化学実習について
発表者
(所属)
吉田真史、虫生原絹子、多留康矩(武蔵工業大学)
連絡先 〒158-8557 東京都世田谷区玉堤1-28-1 武蔵工業大学工学部
TEL: 03-3703-3111(ex2392) FAX: 03-3323-7576
E-mail:
キーワード Education, MO Calculation, MD Simulation
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
大学1年生の化学実験に、MOPACによる分子軌道法計算などを導入し、化学結合や分子構造についての理解を助けることをめざす。
環 境 適応機種名 AT互換機
O S 名 Windows NT
ソース言語  
周辺機器  
流通形態
  • 化学ソフトウェア学会の無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス,出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他:未定
具体的方法

 

1.概要
 本学では、大学1年生のために「化学実験」を開講しており、10テーマの実験課題を用意している。本発表の計算化学実習は、これらの「実験」の一つとして実施されているものであり、その目的は、計算化学の技法を修得することではなく、化学結合や分子構造のイメージを視覚的に理解することにある。
 実習では、AT 互換機を2人に1台割りあて、WinMOPAC、WinMasphyc(富士通)により、分子軌道法計算、分子動力学計算を実行している。計算原理、操作方法の解説は、約100ページの説明書のほか、Web 形式のオンラインマニュアルで提供している。

2.実習内容
(1)酸素 O2 の原子間距離
原子間距離を変えながらMOPACによって生成熱を計算し、原子間距離 vs 生成熱のグラフから最安定原子間距離を求める。極小値の存在については、電子と原子核の古典的な静電相互作用によって説明しているが、興味をもった学生に対しては、分子軌道法の考え方も説明している。

(2)オゾン O3 の結合角
原子間距離を固定して、結合角を変えながら生成熱を計算し、結合角 vs 生成熱のグラフから最安定結合角を求める。また、酸素O2との安定性の比較などをおこない、オゾン層などの環境問題について考える。

(3)エタンの二面角
原子間距離、結合角を固定し、二面角を変えながら生成熱を計算する。そして、生成熱が60度おきに安定になる理由を分子模型などを使って考える。

(4)ジクロロエタンの二面角
原子間距離、結合角を固定して、二面角を変えながら生成熱を計算し、 二面角 vs 生成熱のグラフを描く。そして、gauche型とtrans 型のエネルギー差について、分子模型などを使って考える。さらに、ボルツマン分布を仮定して、両者の存在比を計算する。

  図1 オゾン     図2 ジクロロエタン    図3  ジクロロエタンの生成熱

(5)食塩 NaCl の結晶エネルギー
食塩の結晶(8原子、64原子、216原子、512原子・・・)について、WinMasphyc による分子動力学計算をおこない、結晶相における静電相互作用について考察する。

3.まとめ
 「化学実験」の一環として計算化学を導入してから約3年が経過したが、学生たちの興味・関心を集めている。本学の新入生は、高校において化学を履修しない者が多いため、化学に対する苦手意識を取り除き、化学結合や分子構造のイメージを把握するのに、大きく役だっている。一方、テレビゲームに親しんでいる最近の学生のなかには、コンピューターに数値を入力すること自体に違和感をもつ学生も見られるため、操作手順の変更を検討中である。

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