演 題 仮想現実感を利用した新しい対話型動画表示
発表者
(所属)
時田澄男,○杉山孝雄,細谷治夫(埼玉大学工学部,お茶の水女子大学理学部)
連絡先 〒338-8570 埼玉県浦和市下大久保255 埼玉大学工学部応用化学科
TEL:048-858-3516 FAX:048-858-9534
E-mail:,
キーワード 仮想現実感,動画表示,原子軌道,可視化,等値曲面
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
原子軌道の外側から近づいて原子軌道の内側に入っていくかのような効果,すなわち,仮想現実感が得られる新しい動画表示を行った,複数の窮状の等値曲面を持つ2s以上のs軌道や,複数の球状の節を持つ5d3z2-r2軌道などの等値曲面表示に有効であった.
環 境 適応機種名 Macintosh及びIBM PC/AT互換機
O S 名 Mac OS & Windows 98/2000
ソース言語 QTVR, GIF Animation
周辺機器  
流通形態
  • 化学ソフトウェア学会の無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス,出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他:未定
具体的方法

 

1.目的
 水素原子の原子軌道は,3次元の波動としての性質を持っている.等値曲面表示(図1右)は,原子軌道の性質を表現することに適した手法である.しかしこの手法は,中心が等しい複数の球殻状の等値曲面を持つ 2s, 3s, 4s などの軌道では,中心から離れた等値曲面にさえぎられて中心に近い等値曲面が見えない.このため,s 軌道を表現する方法として,断面図(図1左)が適しているとされてきた.また,複雑な構造の軌道について,節面 (node) も同時に表示すると,同じ欠点が現われる.例として複数の球状節面を持つ 4p, 5d 軌道などがあげられる.形状をあらわすという利点を保持しつつ,内側の等値曲面や節面を見るためには,どうすれば良いかを考え,仮想現実感を利用した新しい動画を作成したので報告する.

2.方法と結果
 動画の元になる静止画は,グラフィックワークステーション SGI - INDIGO 上で動作する可視化ソフトウェア AVS (Application Visualization System) を利用して作成した.複数の静止画像からの動画の合成には,仮想現実感作成ソフトウェアであるQuick Time Virtual Reality Authoring Studio を利用した.また Web site 上で広く利用されていて汎用性のある動画手法である GIF Animation を利用した動画も,作成した.

 筆者らは,目的で述べた等値曲面の有する欠点を避ける表示法を見いだした.それは,連続拡大表示法と呼ぶ方法である.ここでは,2枚の球面の等値曲面を持つ 2s 軌道(図1)と,2枚の円錐面と2枚の球面の節を持つ 5d3z2-r2 軌道(図2)を取り上げた. 2s 軌道は,最初外側の等値曲面のみ見えているが,徐々に内側の等値曲面も見えてくるという動作になった.5d3z2-r2 軌道は,XZ 平面の等高線表示(図2左)と等値曲面表示(図2右)を同時に表示する.関数値は等高線,等値曲面ともに±0.0016 au-3/2である.等高線表示図の描画領域は±50 au (1 au =52.92 pm) である.等値曲面表示の描画領域が ±50 au から ±10 au まで変化するという動画を作成した.等高線表示の内側に描かれた緑色の正方形(図では外枠と一致)が,等値曲面表示の描画領域に相当している.5d3z2-r2 軌道は,遠方から見ると,内部の等値曲面が外部の等値曲面や球形の節(青色のメッシュ表示)に阻まれて見にくい.今回の手法を利用することで,内部の構造が明瞭となった.

Figure 1. Cross section on XY plane (left), wave function plot (center) and isosurfaces (function value = ±0.0270 au -3/2) (right) of 2s atomic orbital

Figure 2. Contour on XZ plane (left) and isosurfaces (right) corresponding to the area shown in figure (left) by green squares of 5d3z2-r2 atomic orbital function value = ±0.00160 au-3/2

3.参考文献
時田澄男, 杉山孝雄, 細矢治夫, J. Computer Aided Chemistry, 1, (2000), in press.

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