演題  Windows環境における化学ソフトの統合
発表者
(所属)
 小谷野和郎(コヤノリサーチ・ラボ)
連絡先  〒152 東京都目黒区緑が丘20209
  Tel & Fax 03-3725-0319
キーワード  Gaussian HyperChem X線解析 静電ポテンシャル 有効内殻ポテンシャル
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
特にGaussianなど市販やパブリック・ドメインの化学ソフトを連携して使うべく、先ず化学構造式で統合することを図ったものである。そのために特に独自に開発したプログラムは今回はない。
環境 適応機種名 IBM PC/AT 互換機   
OS 名 MS-DOS 6.2/V, WINDOWS 3.1   
ソース言語 FORTRAN, Visual C++など   
周辺機器 プリンター、CD-ROMドライブなど   
流通形態
右のいずれ
かに○をつけ
てください)
  • 化学ソフトウェア学会の
    無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ○ソフトハウス、出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他
  • 未定
具体的方法
末尾の参照文献の他、HyperChemの日本販 売は(株)ケイ・ジー・ティ
Tel 03-3358-5261

1.はじめに

 計算化学を始め種種の化学ソフトを連携して使えるように統合するには、先ず第一に各ソフトで化学構造を表すフォーマットが相互に変換可能なことが必要である。このフォーマットには、結合表のような二次元的なものから直交座標まで幾つかが用いられている。ここでは最近、著しく進歩したWindows環境下で主にX線構造解析結果の結晶部分座標と非経験的分子軌道法Gaussian1)入力Z-マトリックスとをBrookhaven Protein Data Bank(PDB) フォーマットにより統合して使用した結果について2例を報告する。X線解析からの構造は精度が良いので最適化の必要が殆どない。

2.統合化学システム

 構成したシステムはワープロ、インターネットからPDB データベース、X線解析、非経験的分子軌道法Gaussianまで含む。他のソフトでも同様に構成できるであろう。(図1)

3.ワープロから計算化学へ

 二次元的構造でも、結合表のフォーマットを合わせて分子力場により二次元構造から三次元構造を起すことができる。構造式作図ソフトChemStructureTM 2)による構造式をクリップボードを経てモデリング・計算化学ソフトHyperChemTM 3)へ転送する。逆もまた可である。

4.結晶部分座標のGaussianへの入力

 先ず結晶中の分子の部分座標をHyperChemの拡張、ChemPlusTM のモジュールCrystal Builder


図1.構造式による化学ソフトの統合

によりケンブリッジ構造データベースの.CSDフォーマットで読込み、MOPACの.ZMTフォーマットを経てPDBフォーマットに変換する。Gaussianはこのフォーマットを読込むことができる。4)

5.使用例

 5.1 静電ポテンシャル誘導電荷
indirubinのmonooxime誘導体において(図2)アミド部にメチル基を導入すると(R1=CH3)、溶解性は増すが抗白血病活性が無くなることに対応してC1からC10に至る共役系の電荷分布が大きく変化する。5) X線解析結果を入力し、電荷はBrenenのCHELPGにより基底関数3-21G,MP2レベルの電子相関を考慮して求めた。MP2を考慮しないとC1だけに差があり、半経験的方法のMulliken電荷では差が見出されなかった。


図2.インジルビン誘導体

 5.2 有効内殻ポテンシャル
 基底関数が改良されBiに至るまで殆どの元素を扱うことができる。4酸化オスミウムOsO4の付加した錯体をケンブリッジ構造データベースで検索し(#COTTEK)、OsO4を切出した。基底関数LANL1MB、LANL2MB、LANL2DZに対応してエネルギーはそれぞれ-309.784、-385.098、-389.358 A.U.の順に低くなり、LANL2MBでは大幅に改良されて時間は殆ど変わらずに短い。

参照文献

1) Gaussian 94W R: Gaussian, Inc., Pittsburgh PA, 1995.
2) ChemStructure: Megalon S.A., 400 Bel Marin Keys Boulevard Suite 102 Novato, CA 94949, '94.
3) HyperChem: Hypercube,Inc., 419 Philip Street , Waterloo, Ontario, Canada N2L 3X2.
4) James B.Foresman and AEleen Frisch; Exploring Chemistry with Electronic Structure
Methods: Second Edition, p.xiv, Gaussian, Inc.,Pittsburgh PA, 1996.
5) Chunmin Li, Yunhong Go, Zihua Mao, Kazuo Koyano, Yasushi Kai, Nobuko Kanehisa,
Qingtai Zhu, Zhonghua Zhou, and Souyu Wu; Bull. Chem. Soc. Jpn., 69, 1621-1627(1996).