演題 GUIを利用した数値解析
――― 吸着等温線による細孔径分布の解析
発表者
(所属)
盛 岡 良 雄
(広島県立大)
連絡先 〒727 広島県庄原市七塚町 562 TEL:08247-4-1710 FAX:08247-4-0191
広島県立大学経営学部 E-mail:
キーワード 数値解析、吸着等温線、多孔体、細孔径分布
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
少数の実験データから、複雑な解析計算を経て解を得るとき、自動的な最適化の計算では有意な結果の得られないことが多い。このプログラムでは、GUIを活用し研究者の経験的判断を取り入れながら、有意解を得ようとする。例として、吸着等温線の解析を取り上げた。
環境 適応機種名 不 問
OS 名 Windows 95 または Windows NT
ソース言語 Delphi 3 (Pascal)
周辺機器 プリンタ(必須ではない)
流通形態
右のいずれ
かに○をつけ
てください)
  • 化学ソフトウェア学会の
    無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス、出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他
  • ○未定
具体的方法

1. 従来の解析法とその欠点

 吸着等温線の測定結果から、細孔径分布を得る手法は、多孔性材料のキャラクタリゼーションに欠かせないものとなっている。しかし、その解析には、積分方程式を含む複雑な連立方程式を解く必要がある。
 従来、一般に行われているのは、等温線の実測点の間を一つの区間とし、それぞれの区間について、差分方程式をたて、初期値問題として逐次解いていく方法である。しかし、これでは、実測点の個数に相応した大まかな分布曲線しか得ることができない。また、実測値に含まれる実験誤差が、そのまま結果に反映されてしまううえ、この誤差は逐次計算の進行に伴って積算、拡大されるのである。
 非線型最小二乗法を用いても難点は解消されない。この種の問題では、最小二乗和の極小点が無数に存在し、一意的な最適解を得るのが難しいのである。
 いずれの方法でも、基本的な問題点は、解を支持するのに十分なだけの数と精度の測定点がないということにある。
 もちろん、我々はどんな方法を使おうと、データ数に見合った数の未知数を持った解しか得ることはできない。しかし、多くの化学上の問題では、“データ”として使えるのは、なにも実測点の数値だけではないのである。
 通常の多孔体の細孔径分布は、特別な場合を除き、単一ピークの曲線となるだろう。また、曲線は滑らかであり、曲線の形状も正規分布や、それに類したものとなるだろう。このように、数値で表すことはできないが、個々の研究者が持っている多くの経験や常識も、実は解析のためのデータとなりうるのである。
 そこで、GUIを利用することにより、これらの非数値的情報も取り入れながら、解析を進めようとするのが、このプログラムの目的である。

2. 解析の実際

 下図がプログラムの画面の例である。この図は、解析がほぼ完了した最終段階を示している。図において、白丸は等温線の実測点、赤線は等温線の(計算)曲線、また、青線は細孔分布曲線である。解析の目標は、赤色の曲線が実測点を滑らかにつなぐようにすることである。
 水色で示したゾーンが、現在、曲線と点の合致操作を進めている部分である。それぞれのゾーンの赤と青の曲線は、(操作曲線スイッチの切りかえにより)いずれもマウスでドラッグすることができる。また、その操作の結果は直ちにもう一方の曲線に反映されるので、合致の程度を画面上で容易に判断できる。 赤線が実測点を通って滑らかにつながったところで解析の完了である。