演題 非線形等温線に基づくクロマトグラフィーのシミュレーション(2)
発表者
(所属)
菅 田 節 朗 ( 共 立 薬 大 )
連絡先 〒105 東京都港区芝公園 1-5-30 共立薬科大学
    Tel 03-5400-2657 Fax 03-5400-1378
キーワード 非線形等温線 BET吸着式 クロマトグラフィー シミュレーション
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
より複雑な非線形等温線(BET型、S字型)に基づくクロマトグラ フィーのシミュレーションを行い、そのクロマトグラムの形について 移動率による解釈を試みた。
環境 適応機種名 NEC PC-9801シリーズ
OS 名
ソース言語 N88BASIC(86)
周辺機器 プリンター、ディスプレイ
流通形態
右のいずれ
かに○をつけ
てください)
  • 化学ソフトウェア学会の
    無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス、出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他
  • ○未定
具体的方法

1.はじめに

 クロマトグラフィーの学習において、非線形等温線の形とクロマトグラムの形との関係はすぐには理解しがたい。著者らは、そのよりよい理解のために、比較的単純なガラス容器を用いたモデル1)を発表した。このモデルはたいへん分かりやすいが、単純ではあるが特殊な形をしたガラス容器を必要とするし、その手操作はやや煩わしい。一方、パソコンによるシミュレーションがその理解を助けると期待されるが、単に計算式を入力し結果(クロマトグラム)を得るだけでは十分な理解は得られない。著者は前回、ラングミュアー型の単純な非線形等温線(単純な凸型、凹型)に基づくクロマトグラフィーのシミュレーションを行い、そのクロマトグラムの形を移動率で説明した2)。移動率は簡単に表示でき、クロマトグラムの説明にも有効である事が分かった。
 今回は、より複雑な非線形等温線(BET型、S字型)に基づく同様のシミュレーションを行い、移動率による説明を試みた。

2.基になる理論と計算

 段理論のうちの1つ、discrete flow model の考え方を用いた。BET型はBET吸着式を用い、S字型は便宜上BET吸着式の逆関数を用いた。これらの等温線の特徴はキャパシティファクターk’に極小、極大が見られることである(図1)。図2の計算は前回sup2)/supに準じて行った。移動率RはR=1/(1+k’)で計算した。

3.プログラムの概要

 前回、カラム内は固定相、移動相における溶質の分布を示すとともに移動相の移動を逐一確かめながらシミュレーションできるようにしたが、非線形等温線の場合にはごたごたした印象を与え、その有用性がはっきりしなかった。したがって、今回はこの方法はとらず、各段における溶質の総量とRのみを示す単純な表現にとどめた。            

4.結果と考察

 BET型またはS字型等温線であっても、溶質濃度が低いとラングミュアー型の単純な非線形等温線2)となる。したがって、溶質濃度が十分高い条件下でシミュレーションした。結果の一部を図2に示す。nは移動相の移動した段数を示す。クロマトグラムは理論段数N=20での結果である。溶質のカラム内分布がクロマトグラムを与える様子はよく分かるが、これらは結果にすぎない。移動率Rのカラム内変化より、Aではバンドは全般的にはテーリングの傾向にあるがバンド中央ではフロンティングの傾向にある(前回2)参照)と解釈できる。Bではこれとは全く逆に解釈できる。

図1.等温線
A;BET型、B;S字型

図2.溶質のカラム内分布とクロマトグラム  A;BET型、B;S字型(白丸は移動率R)      

5.参考文献

1)S.Sugata and Y.Abe, J.Chem.Educ.,74,406(1997)
2)菅田節朗、化学ソフトウェア学会’96研究討論会講演要旨集、101(1996)