2011年6月15日 表彰

2010年度

日本コンピュータ化学会  表  彰
SCCJ Award of the Year 2010

[ 学会賞 | 功労賞 | 吉田賞(論文賞) ]


日本コンピュータ化学会 2010年度 学会賞

受賞者:

中井 浩巳  氏

早稲田大学先進理工学部化学・生命化学科教授

受賞理由:

  中井浩巳氏は1992年に京都大学で工学博士号(主査は中辻博先生)を取得され、同年に京都大学中辻研究室の助手になられ、1996年に早稲田大学理工学部専任講師、1998年同助教授となられました。2004年から同教授として研究・教鞭に励んでおいでです。
  中井浩巳氏は、量子化学を基盤とし、様々な化学現象の根底に潜む普遍的な原理を明らかにすることおよびそれに基づいて新たな現象を予測し、また設計することを念頭に置いた計算化学的研究を精力的に行っており、さらには理論的手法の開発にも積極的に取り組んでおられます。特に、生体分子やナノクラスターの研究をめざした高精度・大規模量子化学計算手法の開発に関し、内殻-価電子-リドベルグ励起状態をバランスよく記述できる汎関数CVR-B3LYPの開発や、Divide-and-Conquer法に2次摂動論を組み合わせたDC-MP2法の提案をし、大きな成果を得ておいでです。またボルン・オッペンハイマー近似に基づかない非断熱分子理論(NOMO)の提案を行い、固体中の自由電子、非断熱遷移、プロトン・トンネリングといった従来方法では取り扱いが非常に困難である現象の解明を行う手法を開発しました。NOMO法では原子核と電子の波動関数を同時に取り扱うことに成功しています。
  中井浩巳氏の開発した精密な理論的解析では、実験や観測を実施せずに、数式やコンピュータによる計算によって、物質の種々様々な性質を再現したり予測したりできます。そのため、中井浩巳氏の業績は計算化学の王道を行くものであり、計算化学が実験不可能である不安定な分子や未発見の新規物質の性質を予測することに力を発揮することを広く示しています。
  さらに中井浩巳氏は、計算化学の分野において広範囲に利用されているGaussianシリーズの開発に協力しています。Gaussianシリーズは非常に汎用性が高く、約9割以上の化学者に愛用される最強の分子計算ソフトとして、量子論的化学原理解明の実現をサポートしています。
  以上のような中井浩巳氏の計算化学に対する貢献に対し「日本コンピュータ化学会」は、ここに中井浩巳氏を本会の学会賞の受賞者とすることに決定致しました。

(文責:会長 細矢治夫)

Top


日本コンピュータ化学会 2010年度 吉田賞(論文賞)

受賞論文:

Microsoft Excelを用いたケモメトリクス計算(3)
吉村 季織1, 茂谷 明宏1, 高柳 正夫1

1) 国立大学法人東京農工大学農学府,

Journal of Computer Chemistry, Japan, Vol. 9(2010), No. 2, pp.109-120.

受賞理由:

 化学データを数学的・統計的手法により解析する「ケモメトリクス」が化学工業や新薬開発の現場で盛んに用いられるようになっているにもかかわらず、残念なことに我が国の大学の化学教育の場ではほとんど取り上げられていない。そのような状況を打破するために、著者らはMicrosoft Excel (Excel)の持つ「高い普及率」と「計算の流れを視認性よく組み立てられること」に着目し、Excelを用いたケモメトリクス計算の論文をシリーズで出版してきた。本論文は3報目であり、ここでは、重回帰による定量分析をExcelワークシート上で行う方法を報告している。
 本論文中では、ケモメトリクスによる解析がしばしば必要となる吸光スペクトルを想定して議論を進めるため、スペクトル生成用のワークシートを作成し、生成したスペクトルを用いて、Lambert-Beer則を応用した重回帰(LBA)および一般的な取り扱いの重回帰(MLR)による定量計算法をワークシート上で行った。これにより、Excelの基本的な機能のみで重回帰を用いた定量計算が行えることが示された。そしてこれら2つの方法について定量性能の比較を行い、LBAはスペクトルのノイズに対して、MLRは未知成分の存在に対して耐性があると示唆された。
 著者らはExcelを用いた計算化学的解析法の開発を行って質の高い結果を報告している。本論文はコンピュータ化学分野において質の高い内容を持つばかりではなく、計算機化学の発展に大きな希望を持たれていた故吉田 弘先生のご意志に添うものであるので、ここに一層の発展を期してこれを吉田賞論文として表彰する。

(文責:会長 細矢治夫)

Top


日本コンピュータ化学会 2010年度 功労賞

受賞者:

河村 雄行  氏

岡山大学大学院環境学研究科教授

経歴:

1975年 岡山大学 理学部 地学科卒業
1977年 岡山大学 大学院理学研究科 修士課程地学専攻修了
1979年 東京大学 大学院理学系研究科 博士課程地質学専攻 中退
1979年 東京大学 理学部 地質学教室 助手(第3講座、応用地質学)
1983年 岡山大学 温泉研究所 助手 (地殻熱学)助手・研究生
1985年 北海道大学 理学部 化学科 助手・助教授(無機化学講座)
1993年 東京工業大学理学部 地球惑星科学科 教授
1998年 東京工業大学 大学院理工学研究科 地球惑星科学専攻 教授
2011年 岡山大学 大学院環境学研究科 資源循環学専攻 教授

受賞理由:

 河村雄行氏の研究内容は計算機化学分野の多岐にわたります。特に地震波の伝播,マントル対流,マグマの発生,地球の分化等の大きなスケールでの諸現象は,地球・惑星を構成している材料物質(鉱物、マグマなど)の性質、さらには原子・分子の運動、あるいは電子と原子核の挙動すなわちミクロスケールでの諸現象に支配されているとの観点から、無機物理化学の知識と分子動力学的手法を駆使して地球惑星物質、環境関連物質、材料物質などの本質にアプローチしておいでです。その結果は多数の原著論文の他に多くの著書も世に出され、斯界の研究者から高く評価されております。
   [本会への功績] 本功労賞は、河村雄行氏が本会に長年果たして来られた多大な功績に対するものであります。
  河村雄行氏は、2002年1月1日に発足した、日本コンピュータ化学会に参加し、研究成果を積極的に発表し、学会理事として会の運営に携わって来られました。河村雄行氏の本学会への貢献として特筆すべきは、毎年5月に氏の所属する東京工業大学大学大岡山キャンパスで開催される日本コンピュータ化学会春季年会のホストとしての貢献です。氏のホストとしてのきめ細やかな心配りにより、日本コンピュータ化学会春季年会は毎年盛大に行われ、日本コンピュータ化学会の地位向上に大きな貢献をしています。
  日本コンピュータ化学会は、ここに河村雄行氏を本会の功労賞の受賞者とすることに決定致しました。

(文責:会長 細矢治夫)

Top