2012年5月18日 表彰

2011年度

日本コンピュータ化学会  表  彰
SCCJ Award of the Year 2011

[ 学会賞 | 功労賞 | 吉田賞(論文賞) ]


日本コンピュータ化学会 2011年度 吉田賞(論文賞)

受賞論文:

Genetic Algorithm-based WaveLength SelectionとSupport Vector Regressionを組み合わせた変数領域選択手法の開発
金子 弘昌1, 船津 公人1

1) 東京大学大学院

Journal of Computer Chemistry, Japan, Vol. 10(2011), No. 4, pp.122-130.

受賞理由:

 スペクトル解析およびプロセス管理などのケモメトリックス手法が広く用いられる分野において回帰分析を行う際、隣接する説明変数の間の相関が高いデータを扱う場合に変数を領域単位で選択する試みがなされている。変数領域選択手法の一つであるgenetic algorithm-based wavelength selection (GAWLS) 法により変数領域とその組み合わせを同時に最適化することが可能であるが、モデル構築手法として線型回帰分析手法の一つであるpartial least squares法が使用されており、説明変数と目的変数の間の非線型関係を適切に表現することは困難であった。
 本論文中で著者らは、変数間に非線型性が存在する場合においても適切な変数領域選択と予測精度の高いモデル構築を同時に達成することを目的として、GAWLSと非線型回帰分析手法の一つであるsupport vector regression (SVR) を組み合わせた新規な変数領域選択手法を開発した。そしてこの提案手法をGAWLS-SVR法と命名した。GAWLS-SVR法を用いることで、SVR法による非線型性の抽出とGAWLS法による領域単位の変数選択が同時に達成可能となる。隣接する変数間の相関の強い説明変数と目的変数の間に非線型性があるデータを解析した結果、GAWLS-SVR法を用いることで非線型性を考慮した適切な変数選択が達成され、従来手法と比較して精度と予測性能が格段に向上することを確認している。
 著者らの手法は、スペクトル解析およびプロセス管理のみならず、QSPR・QSAR解析におけるRDF記述子、CoMFA法など連続した変数が重要と考えられるケモメトリックスの分野に適用可能であり、応用範囲は広いといえる。ケモメトリックスのさらなる発展を期してこれを吉田賞論文として推薦する。

(文責:会長 細矢治夫)

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日本コンピュータ化学会 2011年度 功労賞

受賞者:

千田 範夫 氏

株式会社テンキューブ研究所

経歴:

1972年 金沢大学大学院工学研究科修士課程修了
1972年 出光興産株式会社千葉製油所
1973年 同 中央研究所
(担当業務)石油試験、高分子物性、社内情報システム構築、表面分析、計算化学
2005年 IPA認定スーパークリエータ
2007年 定年退職 同年、テンキューブ研究所(個人事業)開業
2010年 平成21年度下期ひまわりベンチャー表彰
2010年 株式会社テンキューブ研究所設立

受賞理由:

 本功労賞は、千田範夫氏が本会に長年果たして来られた多大な功績に対するものであります。
  千田範夫氏は、2002年1月1日に発足した、日本コンピュータ化学会に参加し、研究成果を積極的に発表し、学会員として会の運営に携わって来られました。千田範夫氏の本学会への貢献として特筆すべきは、分子計算支援システム Winmostar の開発と公開です。
 Winmostar は、分子のモデリングから分子軌道計算、計算結果の表示までを Windows 上で実現するソフトウェアで、グラフィカルに分子を構築し、分子軌道法プログラムにデータを渡して計算を行わせ、出力(最適化構造/分子軌道/赤外線吸収スペクトル/紫外・可視吸収スペクトル/NMRスペクトル等)を可視化することができます。本プログラムは、操作性が良く機能も豊富なので、広く世界中で利用されています。2002年に初版を公開してから、現在も更新を続けているアカデミックフリー版は、大学等での教育用の利用が多く、商用版は企業の研究現場でも利用されています。最近のバージョンでは、計算サーバへのジョブ投入機能が強化されていて、インターネットを利用したTSUBAMEやFOCUSの利用にも有効なツールになっています。
 氏は本プログラムの公開により、日本コンピュータ化学会の地位向上に大きな貢献をしています。
  日本コンピュータ化学会は、ここに千田範夫氏を本会の功労賞の受賞者とすることに決定致しました。


(文責:会長 細矢治夫)

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