2016年6月3日 表彰

2015年度

日本コンピュータ化学会  表  彰
SCCJ Award of the Year 2015

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日本コンピュータ化学会 2015年度 学会賞

受賞者:

澤口 直哉

室蘭工業大学准教授

受賞理由:

 2016年2月5日に開催された日本コンピュータ化学会役員会で、本年度の日本コンピュータ化学会学会賞を、国立大学法人室蘭工業大学/もの創造系領域 / 先進マテリアル工学ユニットの澤口直哉准教授に授与することが満場一致で決まりました。ここに同氏の経歴と推薦理由を記します。
[経歴]  澤口直哉氏は、1995年に北海道大学大学院理学研究科化学専攻博士後期課程を修了した。東京工業大学研究生を経て同年10月に新技術事業団創造科学技術推進事業ERATO 平尾誘起構造プロジェクトの研究員に採用された。1996年4月からは通商産業省工業技術院名古屋工業技術研究所(名工研)の研究員となり、2006年4月に室蘭工業大学材料物性工学科の准教授として着任し、組織改編を経て現在に至っている。
卒業研究では無機結晶の高温熱量測定や酸化物ガラスの分光分析を行い、大学院進学後に河村雄行氏から学んだ分子動力学(MD)法を用いて酸化物-塩化物混合融体・ガラスの構造に関する研究を始め、ERATOにおいてもケイ酸塩ガラスの研究を継続した。名工研に異動後はジルコニア系酸化物結晶の酸化物イオン伝導について、MD法による研究を開始した。分子シミュレーションによる多くの先行研究を参考にして単結晶中の酸化物イオン伝導について研究を行い、その後結晶粒界を含むモデル構造を用いた、モンテカルロ法とMD法を併用した粒界偏析の手法をについて検討を進めた。その結果は当学会でも報告されている。
室蘭工業大学へ移籍後は、ジルコニア系セラミックスと同様に酸化物イオン伝導が期待されるブラウンミラライト型結晶や、リチウムイオン伝導結晶・ガラスなどを加えた無機酸化物中のイオン伝導のMD計算を進めている。また、酸化物ガラスの構造解析に関する研究を再開し、X線散乱測定やNMR測定の結果をMD計算の結果と組み合わせてガラス構造と組成の関係について従来よりも踏み込んだ理解に挑んでいる。また、この数年は学内の共同研究としてPhonon-Glass Electron-Crystal物質の1つと考えられているスクッテルダイト化合物のMD計算にも取り組んでいる。計算科学手法としてはほぼ全てが古典的分子動力学法を用いているが、近年は大学院生が中心となり、密度汎関数法ならびに分子軌道法を活用した、酸化物ガラスに適用する原子間相互作用の最適化の研究も進めている。これらの研究の進捗は研究を担ってきた大学院生によって、当学会の年会で報告されている。
「日本コンピュータ化学会」は、ここに澤口直哉氏を本会の学会賞の受賞者とすることに決定致しました。

(文責:会長 細矢治夫)

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日本コンピュータ化学会 2015年度 吉田賞(論文賞)

受賞論文:

The Nature of Si-O-Si Bonding via Molecular Orbital Calculations
Fumiya NORITAKE1), Katsuyuki KAWAMURA2)

1) Geochemical Research Center, The University of Tokyo, 7-3-1, Hongo, Bunkyo-Ku, Tokyo, 112-0033, Japan 2) Okayama University, 3-1-1, Tsushima-naka, Kita-Ku, Okayama-City, 700-8530, Japan

Journal of Computer Chemistry, Japan, Vol. 14(2015), No. 4, pp.124-130

受賞理由:

 マイクロ孔を有するゼオライトは,相転移や負の熱膨張など興味深い熱的挙動を示すことが知られている。しかしながら、ゼオライトの一番小さな構成単位であるSi2-O結合の詳細な性質はまだ明かでは無い。Si2-O結合の詳細な性質を明らかにする事は、ゼオライトを用いた触媒反応のような制御の難しい反応を理解する上で、大変重要である.
本論文ではSi2-Oの結合状態を分子軌道法を用いて詳細に明らかにしている。このような研究は、以前から計算機化学の望ましい研究スタイルとして多くの実験研究者が望んでいた研究スタイルである。本論文で報告された結果並びに研究スタイルは計算機化学の発展に大きな希望を持たれていた故吉田 弘先生のご意志に添うものであるので、ここに一層の発展を期してこれを吉田賞論文として表彰する。

(文責:会長 細矢治夫)

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日本コンピュータ化学会 2015年度 吉田賞(論文賞)

受賞論文:

Mathematicaによる分子動力学
山田 祐理1)2), 片岡 洋右3)

1) 東京電機大学理工学部理学系 〒350-0394 埼玉県比企郡鳩山町石坂 2) 法政大学情報メディア教育研究センター 〒184-8584 東京都小金井市梶野町3-7-2 3) 法政大学生命科学部環境応用化学科 〒184-8584 東京都小金井市梶野町3-7-2

Journal of Computer Chemistry, Japan, Vol. 14(2015), No. 5, pp.172-176

受賞理由:

 本論文では、分子動力学(MD)法の初学者への入門のために、Wolfram MathematicaによるMDのプログラムの開発を報告している。初学者のためいくつかの制限が置かれているがMD計算やその結果を解析するアルゴリズムを理解し易いように、扱う分子間相互作用はLennard-Jones 12?6ポテンシャル、MDセルは立方体、アンサンブルはNEVまたはNVTアンサンブルのみとしてある。Mathematicaのノートブックファイル内で、粒子数、数密度、温度などの計算条件を設定する。計算結果は、熱力学量のほかに粒子の軌跡、粒子配置、二体相関関数、速度自己相関関数、平均自乗変位および自己拡散係数が出力される。
本論文で紹介されているプログラムは、初心者向けとは言え、MDの本質的な条件を示しながら、初心者が自分で自分のプログラムを簡単に開発していくというとても親切な計算機化学の発展に欠かすことのできないシステムであり、本プログラムの開発は質の高い内容を持つばかりではなく、計算機化学の発展に大きな希望を持たれていた故吉田 弘先生のご意志に添うものであるので、ここに一層の発展を期してこれを吉田賞論文として表彰する。

(文責:会長 細矢治夫)

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