2017年6月9日 表彰

2016年度

日本コンピュータ化学会  表  彰
SCCJ Award of the Year 2016

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日本コンピュータ化学会 2016年度 学会賞

受賞者:

佐藤 徹

京都大学大学院工学研究科分子工学専攻准教授

受賞理由:

 2016年2月3日に開催された日本コンピュータ化学会役員会で、本年度の日本コンピュータ化学会学会賞を、京都大学大学院工学研究科准教授の佐藤徹氏に授与することが満場一致で決まりました。ここに同氏の経歴と推薦理由を記します。
 佐藤徹氏は平成6年3月に京都大学大学院工学研究科分子工学専攻修士課程を修了された後、平成9年3月京都大学大学院工学研究科分子工学専攻博士後期課程を修了され、博士(工学)を取得されました。その後、平成10年1月に京都大学大学院工学研究科分子工学専攻助手に採用され、平成16年3月に京都大学福井謙一記念研究センター理論研究部門助教授に昇進され、平成23年3月から京都大学大学院工学研究科分子工学専攻准教授となられました。この間、平成15年10月よりの1年間文部科学省在外研究員としてベルギー王国のルーヴァンカトリック大学で研究に従事されました。
 佐藤徹氏は、分子振動と電子状態間の相互作用である振電相互作用の解明を目的とした研究を行っておられます。振電相互作用は物質における基本的な相互作用であり、Jahn-Teller効果などの現象の起源であるだけでなく、電気伝導性や超伝導性などの電子物性や発光などの光物性の発現にも重要な役割を果たします。佐藤徹氏は、1958年のLonguet-Higgins以来未解決であった動的Jahn-Teller方程式の強結合極限での解析解の導出とその縮退系におけるFranck-Condon因子への応用、Ih対称におけるJahn-Teller効果とスピン-軌道相互作用の共存、振電相互作用の局所的描像を与える振電相互作用密度の概念の提案など、振電相互作用の関わる広範囲な研究分野において基礎となる重要な貢献をされています。
 また佐藤徹氏は、キャリア輸送材料や発光材料など機能性材料における振電相互作用を振電相互作用密度の概念に基づいて解明することを通じて、さらに高効率な材料を実現するための分子設計指針を確立し、実際に新規分子を数多く設計されております。設計した新規分子の多くは、国内外の大学や企業の実験研究者との共同研究により合成・測定がなされ、実験による理論の有効性の確認がなされております。また、振電相互作用密度の概念は化学反応性指標としても有効であり、とりわけ従来のフロンティア軌道理論では予測が難しかったフラーレンなどの大きな分子でも、その反応の位置選択性の予測を可能にすることを示されました。また、最近では、有機EL素子における抑制された振電相互作用による新規発光機構を提案され、産業界からも注目されております。このように振電相互作用の基礎理論から新規機能性材料の創出といった産業応用まで幅広い研究を展開されています。
 以上のような佐藤徹氏の計算化学に対する貢献に対し「日本コンピュータ化学会」は、ここに佐藤徹氏を本会の学会賞の受賞者とすることに決定致しました。

(文責:会長 細矢治夫)

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