空間における様々な理工学上の現象を高速計算機によって解明しようとする分野は計算科学と呼ばれています.この分野の進歩は目覚ましく,ベクトル型スーパーコンピュータや並列コンピュータ等に代表されるハードの進歩と,数値計算アルゴリズムの進歩によって,最近の20年間に計算速度が数百万倍にもなりました.この驚異的な計算速度の向上によって,計算科学は基礎科学のみならず産業界においても有効性が確認されつつあり,次第に従来の実験に置き換わりつつあります.しかし,現実に起こる複雑な問題を十分な精度で解析するには,現在の計算速度はまだまだ不十分であり,より一層の発展が求めら れています.
以上のような背景のもとに,日本学術振興会の未来開拓学術研究推進事業の一つの分野として「計算科学」が取り上げられ,理学および工学の諸問題の大規模計算に関わる第一線の研究者が集まり,平成9年度より研究プロジェクトを開始しました.現在ほとんどあらゆる理工学分野において計算科学的アプローチが用いられて研究が行われていますが,本研究プロジェクトでは、その中から計算科学を代表すると考えられる以下の重点課題を設定し,研究を行うこととしました.
(1)現在の最高速計算機であるテラフロップス(TFLOPS=1秒間に浮動小数点演算を10の12乗回行える演算速度)級計算機が5年間に1〜2桁高速化され,また汎用化されること.
(2)新しい知見を容易に導入可能であり,上記のような高速計算機を最高に活用できる大規模工学設計用ソフトウエアが開発されること.
(3)実験的なアプローチでは解明が不可能な大規模な問題,すなわち地球規模解析および物質解析を取り上げ,有効な計算アルゴリズムが開発され,それが現実問題へ応用されること.
「第1回計算科学シンポジウム」は,本研究プロジェクトを含む国内外の計算科学」研究の新展開について,その目的,手法,期待される成果を集中 的に議論することを目的として開催されたものです.