チアゾリウム塩を用いたホルモース反応の反応機構についての理論的研究

多島 秀男a*, 井上 博愛b, 伊藤 眞人b

a産業技術総合研究所, 〒305-8569 つくば市小野川16-1
b創価大学工学部環境共生工学科, 〒192-8577 八王子市丹木町1-236

(Received: April 15, 2003; Accepted for publication: August 4, 2003; Published on Web: October 29, 2003)

  チアゾリウム塩を用いたホルモース反応の反応機構中の中間体の安定性を議論するために、MOPAC-PM3プログラムを用いて理論的な検証を行った。一般に知られている反応機構(Scheme 2)中の中間体のうち、C1'位に負の電荷を持つ中間体(II, III)はエナミン形を取ることによって安定に存在できることが確かめられた(Scheme 3)。一方、酸素原子上に負の電荷を持つ中間体(II*, III*, IV*, IV)は、そのままでは非常に不安定であることが認められた。この不安定性を解消する因子として、反応メディア中のアンモニウムイオンの存在に注目した。アンモニウムイオン存在下では、負の電荷を持つそれぞれの反応中間体はアンモニウムイオンとイオン対を形成して安定に存在できることが計算より確かめられた。そこで、このようなイオン対形成を考慮した反応機構(Scheme 4)を提案し、特にプロトン転位過程におけるStep CとStep Dについてその遷移状態計算を行った。どちらの場合もただ一つの遷移状態を見つけることができた(Figure 6)。この計算により、提案する反応機構の初期段階の見かけ上の活性化エネルギーは10.9 kcal/molに見積もられた。この値は実験的に求められた活性化エネルギー(19 kcal/mol)とは若干の開きがあるが、これはチアゾリウムのN位置換基や塩基のpKbの違いによるものと考えられる。今のところ提案した反応機構は、よりもっともらしいスムーズなものであり、今後さらなる研究により明らかになるだろう。

キーワード: MOPAC-PM3, ホルモース反応, チアゾリウム塩, 反応機構, イオン対形成


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