北緯32度,東経120〜130度上空のSPM濃度

青山 智夫, 神部 順子, 長嶋 雲兵


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1 はじめに

2007年春から九州地方では高濃度のオキシダントが観測されるようになった[1].宮崎市 (北緯31.9度,東経131.4度,以下31.9N, 131.4Eと記す) でも紫外線のない夜間に高濃度のオキシダントが観測されている[2].浮遊粒子状物質 (Suspended Particulate Matter: SPM) が50 ~100mg/m3とそれ程高濃度ではないが視程が10km以下の日が多くなっている[3].東京 (35.7N, 139.8E) から太平洋岸に沿い南西に航行すると高度1 ~3kmに灰色の高濃度の霞をしばしば発見する.2006年以前は石廊崎 (34.6N, 138.8E) を越えると対流圏大気は清浄になり視界が開けたが2007年以降はそういうことがない.2008年以降,宮崎市から8 ~10時日向灘上空を観察すると太陽光球近傍が白く輝き空は青くない.大気中のエアロゾルが増大していると考えられる.南九州地区には工業地帯はない.しかし上空には偏西風が流れている.エアロゾルは流入して来たか,二次的に生成したものか不明であるが源は東シナ海以西と考えざるを得ない.我々は31 ~32N, 120 ~130Nの上空のスペクトルを調査した.

2 月光スペクトル解析による観測方法

2. 1 空中SPM観測

九州の大気研究は精力的に行われている.2003年三好らは長崎県福江島 (32.7N, 128.8E) において地上のエアロゾル濃度と粒径の観測をaerosol mass spectrometerを用いて行った[4].それによれば高濃度のsulfate, nitrate, 有機物が西風の時に観測されている.Backward trajectory analysisにより汚染源の局所性は排除されている.高濃度汚染は2 ~3日間続き急激に低下する.これは風向の変化による大気の入れ替わりのように見える.粒子径分布は0.1 ~2.0mmで,極大は0.6mm,隠れた小極大が0.2mmにある.三好らは移流中の粒子径の変化を述べている.径分布から考察するとSPM観測の代表的な方式b線吸収法,散乱光計測法[2]は適切ではなく,後者を使用する市販のデジタル粉塵計も同様である.
酒巻らは沖縄 (26.9N, 128.3E) の地上50mで対流圏からの沈降大気中にC2H6, C3H8を観測し源が中国北西部であることを示している[5].
空中SPMの航空機観測は (41.1N, 121.1E) ~(36.1N, 120.3E) ~(31.8N, 120.0E) 間,高度3km ~0.5kmでSO2, NOx, SPM2.5,10について行われ,汚染が ~0.5kmの下層にあること,(31.2N, 121.5E) 上空が高濃度であることを示している[6].中国大都市の汚染大気塊の移流は畠山[7, 8]に詳しく説明されている.それによれば汚染は0.5 ~3kmの境界層で著しい.この他,乗鞍岳の自由対流圏のエアロゾル観測では汚染濃度は下層の境界層より小さい[9].
空中のSPMを観測するにはライダーが最適である.アジアのライダー網は構築されつつある[10].しかし観測点数は現在も不十分である.31 ~32Nに沿っては観測点 (31.9N, 117.3E) が在ったが現在は無い[10].ライダーは個人的に導入できるものではないし,粉塵計では高度数kmのSPMは計測できず,さらに観測可能な粒子径の問題もある.バルーンを上げるのも申請と専門業者の介入を要する.数kmのSPMを観測する手段は無いに等しい.個人的に空中SPMにアプローチできるのは光学的測定と思われる.
そこで我々はSPMによる月光スペクトル変化をデジタル一眼レフカメラで撮影した.月は期間も限定され気象条件にも影響されるが費用もかからず,かつ宇宙から大気を透過する有用な光源である.月光には大気中の様々な物質の情報が含まれている.太陽光も月光と同様であるが,あまりにも強烈なため受光素子を劣化させる恐れがあり取り扱いが難しい.我々は太陽の散乱光 (空の色相) を利用した.散乱光は対象の近くで測定する必要がある.我々は地上と航空機 (高度約10km) からRayleigh, Mie散乱比をカメラで測定した.
そのような機材と簡易測定で空中のSPMについてどういう情報が得られるか興味深い.普通にデータ処理を行ったのでは有意な結論は得られない.どの点に注意すべきなのか,また補助手段が必要なのかを議論する.

2. 2 スペクトル測定の問題点

光源のスペクトルをデジタルカメラで測定する時の問題点は以下である.
  1. 受光素子の入力光強度に対する線形応答性,
  2. 受光素子の直前に置かれたフィルタ特性を含めた画像処理エンジンの性質,
  3. 入力光を回折させる素子と光学系の価格.
我々は次のように対処した.
応答関数は中輝度 ( ~27) で線形,低高輝度端で応答が減少するシグモイド類似関数である.入力光が極端に弱くなければスペクトルの明度が中輝度となるように測定した.応答関数計算の基になる入射光量に対する受光素子の応答性は付録Aにある.
入射光のスペクトルを次のように得た.カメラの撮影レンズ直前にl (波長)=370nmのロングパスフィルタを置き,ウィンドウ面に回折格子フィルムを枠により固定した (Figure 1).この系に斜め方向から光を入射すると格子フィルムによりqの角度で光が回折される.
光の回折角は,

である.ここでqは回折角度[deg],lは入射波長[nm],nは回折次数, dは格子周波数[本/mm]である.
Figure 1のCCDはデジタルカメラの受光素子である.カメラの画像処理エンジンにより1画素につきRGB値が得られる.次のようにして各画素の順番と波長の対応関係を求めた.


Figure 1. The diffractive optics B: Window (ex. L37 filter), G: Diffractive grating, L: Lense (ex. f=50mm, F=1.4).

光源として高圧水銀灯を1km以上遠方から斜め約30度方向で撮影した.すると点線の虹状画像が得られる.それは水銀灯のスペクトルである.画像をスキャンしピクセル番号値とRGB強度値を得る.RAW画像の現像条件は色温度を太陽光とした.dは格子周波数であるが格子フィルムの製造精度が公表されていないので,これをパラメータとし,標準光源のスペクトル位置が実測と一致するように決定した.nn次の回折スペクトルに相当し,整数とする.我々が決定したn, d値は2, 542であった.レンズ (L) の焦点距離と画素数から1ピクセル当たりの撮影角が求められ,回折角qを撮影角で割り,ピクセル番号値と波長の対応スケールを求める.
レンズの焦点距離50mmのときの水銀燈の輝線とピクセル番号値との対応をTable 1に示す.Figure 2は水銀燈スペクトルをRGBの三曲線で表したもの,Figure 3は仰角38.0degの黄色い月のRGBと平均スペクトルを表したものである.横座標はTable 1により決定したスケールである.Figures 2, 3よりデジタルカメラのRGB成分はRG,GB曲線の値が等しくなる所で分割されている.ゆえにRの帯域は585 ~665nm, Gは510 ~585nm, Bは420 ~510nmである.この帯域は (カメラの) メーカにより異なるので測定前に計測しておく.

Table 1. Assignments for the spectrum peaks of a high-pressure mercury-vapor lamp.
l [nm]q [deg]f=50mmAssignment
400.021.650 [pixel]Origin
404.721.9230Hg
407.822.1050Hg
435.823.71231Hg
490.026.87587Fluorescence
546.130.25967Hg
547.030.31973Hg
577.032.161182Hg
579.132.291197Hg
610.034.241417Fluorescence
690.739.582017Hg


Figure 2. Observed peaks of a mercury-vapor lampThe scale for the wave length is got from the assignment in the Table 1.


Figure 3. Observed spectrum of the moonlight (yellow), 23:34, 2008/5/16, at Miyazaki city.B, G, R are the blue, green, red ingredients for the moon light. L is the average, the visibility curve, i.e., L= (B+G+R)/3.

月光は月面物質の吸収により太陽光 (6000K黒体輻射) より長波長成分が多いが,プルキンエ現象によりほぼ白色光に見える.我々はデジタルカメラのRAW現像時ホワイトバランスを5500Kとした.眼視では赤色最大波長は約700nmであるがデジタルカメラでは受光素子直前のショートパスフィルタにより650nm付近でカットしている.そのためR成分は狭帯域かつ輝度大となり熱雑音も大きい.GB成分の処理は違うため,RGB平均値Lの波長依存性は平坦でなく曲線となる (Figure 3のL曲線).曲線Lはスペクトル計測の基準であるvisibility curveである.低SPM (<20mg/m3),低湿度 (<50%),快晴時の中天の月について使用カメラ,レンズ,画像処理エンジン[11]毎に測定しておく必要がある.
カラーフィルムでは480, 580nm付近で感度が低下し,この部分で抜けが起こり眼視とは違った色彩が得られる[12].Figure 3のデジタルカメラでも同様で510, 580nm付近のスペクトル強度については低感度である.
Figure 1の光学系はスリットなしのため上弦下弦の細い月が望ましい.高輝度星でも良いがSPMを通してスペクトルを取るには明るさが不足することが多い.定点観測のとき地上SPM濃度を調べる場合は数km遠方の水銀灯が使用できる.

2. 3 B/R, G/R比測定法

昼の空中SPM濃度を調べるには月の代りに太陽を用いれば良いが,太陽は月の2.514倍明るいので光球のスペクトルを撮影することが難しい.まず回折系の0次光をカットしなければならないが簡単ではない.さらに高濃度のNDフィルタ (Kenko ND400等) の特性に疑問があるので使用したくない.以上の理由により透過型の簡易分光器作成は難しい.直視分光器をコリメート法で接続することも考えられるが充分な遮光を考慮すると外国での移動観測は難しい.
単板式デジタルカメラは三色分解フィルタ (モザイクフィルタ) を内装している.Figure 3で明らかなように内装フィルタの透過性は広帯域であるが重複部は少なく,精度は良くないが散乱光分解はできる.この方法 (以下B/R, G/R比測定法という) ならばカメラに付加する補助光学系は不要である.我々は外国において個人で移動しながらSPMの散乱光を観測するために本方式を検討した.
モザイクフィルタの特性は極大波長 (B=470, G=545, R=605nm) を中心とした正規分布と異なる.そのため昼間の空を撮影して輝度値の比B/R, G/R値を求めたとき,その値がSPM濃度とどう関連するのかを調べる必要がある.
空気分子はRayleigh散乱,SPMはMie散乱を起こすと仮定し両散乱光の混合比をr, 1-rとする.両散乱光の波長依存性を-4, k (パラメータ) とする.波長をlとしたときの散乱光の強度は,

である.ここでR, Mは両散乱項の強度レベルを合わせるパラメータである.式 (2) の3パラメータ値を次のように決定した.
[1] Mie散乱の波長依存性は小さいことが知られているのでk=0 (初期値) とする.lの単位をnmとするとRayleigh散乱項は可視光域では非常に小さい値である.現実の空ではMlk<<Rl-4であるから400<=l<=700nmの範囲で関係を満すようにM=10-3, R=1011とする.
[2] SPM最小の快晴かつ太陽と反対方向の空を撮影する.その空 (仰角90deg, SPM=8mg/m3 observed by a dust meter) のB/R, G/R値は3.76, 2.05であった.r=1とし,Bl=470, Gl=550, Rl=610nmとしてB/R, G/R値を計算すると2.81, 1.51である.この値はR, Mパラメータでは変更できない.rは最大値であるから,その変更も不可である.残る手段としてBl, Glを変更する.Bl=430, Gl=510nmのときB/R=4.05, G/R=2.05となる.
[3] SPM最大の煙霧かつ太陽近傍の空を撮影する.この空 (仰角20deg, optical_SPM=571mg/m3) のB/R, G/R値は0.76, 0.86であった.r=0とし,Bl=430, Gl=510, Rl=610nmとしてB/R, G/R値を計算すると1.00, 1.00である.r=0.1ではB/R=4.05, G/R=2.05である.この不連続性は好ましくない.r=0, k=-1ではB/R=1.42, G/R=1.20で現実を表現できない.どうしてもRayleigh散乱のl-4効果を打ち消すためにk>0とする必要がある.試行錯誤の結果r=0, k=1でB/R=0.71, G/R=0.84を得た.不連続性問題は解消した.
この結果 (k>0) はオングストローム係数を考えると奇妙に思われるが,デジタルカメラのB/R, G/R値を現実に合わせるためのRayleigh散乱以外の散乱寄与分と考えた.この是非を次段で検討する.
そうして求めたパラメータrの変化時のB/R, G/R値の表をTable 2に示す.Table 2r値とB/R, G/R値の線形性は保証できない.ただし付録A, Figure A1に示すように単調増加性は存在する.ゆえにB/R, G/R値から相対的なSPM濃度の大小が分かる.

Table 2. Estimated relations between Rayleigh/Mie scattering ratios and B/R and G/R values.
r1*0.90.80.70.60.50.40.30.20.10**
B/R ratio4.053.763.473.162.852.522.181.831.471.090.71
G/R ratio2.051.941.841.731.611.491.371.241.110.980.84
Obs.SPM8***571
* Complete Rayleigh scattering, ** Complete Mie scattering. They are our hypothesis.***[mg/m3]. The Obs.SPM is SPM density on the ground, which is measured by optical scattering method using 880nm laser ray.The values corresponding with the blank in the Obs.SPM are listed in Table B1 in appendix B.The Table B1 is got under a climatic condition.

Figure A1の非線形性は対数的であるから検量線を作ればB/R, G/R値の片方(あるいは両方)からSPM濃度が計算できるように思われるかも知れない.しかし下記の状況からSPM濃度を求めることができない.

  1. SPMは単一物質ではなく様々な成分を有す.
  2. 粒子の形状と大きさが様々で刻々変化する.
  3. 粒子表面に様々な物質を吸着している.
  4. 濃度がppbオーダであるので測定 (セル) 長が数kmとなり,その間のSPMの単一性の保証ができない.
これらの状況はSPMを標準粒子のみのエアロゾルと仮定し時間変化しないとすればクリアできる.実際にその仮定の下にレーザ (l=880nm) 散乱光のphotonをカウントするデジタル粉塵計が市販されている.それを使えばSPM濃度をmg/m3単位で測定できるが,測定値はカウント値を換算する入力パラメータ (換算係数) に依存する.換算係数は上記SPMの諸条件の函数で時間変化する.
本論文では地上のSPM濃度値はB/R, G/R比からの計算ではなく市販の粉塵計 (柴田科学製LD-3B, 3K) の実測値である.換算係数はデフォルト (標準反射板で校正した) 値である.
付録Bに2008.7 ~8の日向灘上空のSPMのB/R, G/R値と測定点の地上SPM濃度 (b線方式測定) の表Table B1を示す.その表は備考欄に記載された気象条件が満たされたとき成立する.
B/R, G/R値の両方を提示する理由について記す.本論文で議論している大気ではB/R値のみで十分でありG/R値は同様の傾向を示す確認である.しかし2008.9以降G成分に特徴的な吸収をもつSPMが存在することが観測されるようになった.現在観測例を蓄積している.将来大気汚染がより深刻になったときの議論のためG/R比を記録しておく方が望ましいと思う.
B/R, G/R値の大小関係で相対的とはいえ空中のSPM濃度の大小を議論できることは有意である.

2. 4 オングストローム係数

Mie散乱の波長依存性 (k>0) の問題を議論する.Rayleigh散乱以外の散乱光の寄与分を実際の青空を分光器 (浜松フォトニクス製C9407MA) で測定して調べた.結果をFigure 4に示す.


Figure 4. The scattering spectrum of the sky.A: The pure blue sky of the fine day, 2008/3/5, 8:55 at Miyazaki Kaeda area. SPM (b-ray)=4mg/m3, visuality = 40km.B: The hazy blue sky of the fine day, 2008/3/7, 10:00 at Miyazaki. SPM (b-ray)=29mg/m3, visuality = 10km.D: The difference between the A and B curves.

C9407MA分光器の入力は径600mmのグラスファイバー (コネクタはSMA905) である.入力部にはFigure 5のような非球面レンズつきフードを付け角度2tan-1{(D1+D2)/2L}=2.9degの光を入力した.


Figure 5. A hood and condenser lens to conduct the ray into the section of a glass fiber.L: hood length of 200mm. W: window with a filter, D1: the diameter, 5.2mm.Lz: infinite conjugate design aspherical lense of f=15.29mm, N.A.=0.16, D2: the diameter, 5.0mm.SMA905: the connecter for a glass fiber, which is for visual wave length, 340 ~780nm.

Figure 4の曲線Aは視程が上限に近い40kmの快晴時の宮崎市加江田渓谷丘陵地帯[13]の空のスペクトルである.曲線Bは地上のSPMは普通 (29mg/m3) であるが視程が10kmと低い霞がかかった同地帯の空のスペクトルである.デジタルカメラで空を撮影する際,ダイナミックレンジが28段階と狭いため露出を合わせる.その効果は

である.cは最小操作のために必要.曲線Dは曲線A,Bの差,霞のスペクトルを表わす.そのスペクトルはB成分は負,G成分はほぼ零,R成分は正である.明らかに波長依存性はk>0で,Table 2のB/R, G/R比の傾向を支持する.デジタルカメラで撮像するとMie散乱の波長依存性 (lk) はk>0となる.その原因はカメラの露出補正機能による.

2. 5 窓の影響

空中のSPM濃度を調べるためには地上からの望遠撮影では限度がある.航空機からの撮影が必須である.しかし一般の航空便からの撮影では窓を通して撮影することになり,窓のRGB輝度に与える影響を考慮する必要がある.汚れている窓の規格はないので,それを軟調フィルタ(ケンコー製Foggy-AとBlack-mist)で代用する.それらのフィルタを使用すると霞がかかり画像コントラストが低下する.眼視的にはその変化は航空機の窓より大きい.ゆえにフィルタ付きで空のスペクトルを計測すれば航空機の窓の影響の上限を推定できるであろう.
2008/3/5, 10:40宮崎大学では完全な快晴の空であった.しかし次第に霞がかかり午後13:30過ぎにはヘイズとよばれる状態となった.空のスペクトル変化をFigure 6に示す.基準スペクトルは10:40の測定である.それを横軸にとる.


Figure 6. Effects of the Foggy-A and Black-mist filters.Reference: a complete blue sky of the fine day, 2008/3/5, 10:40 at Miyazaki University.#1 ~3: Blue skies of the same day, those are 11:48, 12:40, and 12:53. #4 ~5: Hazy blue skies of the same day, those are 13:50 and 14:57.F: using a Kenko Foggy-A filter at 10:42 of the same day.B: using a Kenko Black-mist filter at 10:44 of the same day.

曲線1 ~3は時刻の経過と共にB成分が減じG成分が増大したことを示す.そのとき眼視的には色相の変化は少なかった.曲線2は太陽南中時である.霞は一種のSPMでMie散乱を起こす.太陽光球からの測定方向の角度が支配的ならば曲線2は曲線1, 3の間にはならない.霞は曲線3のときが最も濃かった.ゆえに曲線1 ~3の変化は霞の効果が大と考える.
ヘイズの状態になると眼視的にも青色は減じ空が白濁する.曲線4, 5はその状況を表している.B成分は著しく減りG成分の短波長側も減る.G成分の長波長側とR成分は増大する.この傾向は曲線F, Bも同様であるが,変化量はヘイズに比べるとl=420nmで0.18倍である.ゆえに航空機の窓が与える影響は小さい.しかし空がわずかに霞むようなレベルでは誤差大である.同一窓を使用するなどの対策を採る必要がある.ヘイズまたは黄砂時ならばB/R比を18%小さくする程度である.

3 月光のスペクトル

2008/3/20 ~24, 31.769N, 119.970E; 3/26, 31.220N, 121.467E; 5/16, 31.932N, 131.420E, 6/13, 31.932N, 131.420Eで地上から月光のスペクトルを撮影した.外国では野外の夜間測定状況が厳しいため分光器の使用を見送った.我々が使用したFigure 1の光学系はカメラにフィルタのように見える回折系をつけるだけで手持ち撮影が可能である.

3. 1 3/20 ~24, 31.769N, 119.970E地点測定

観測データをTable 3,スペクトルをFigure 7に示す.月の仰角は国立天文台のアプレット[14]から計算した (以下各Table同様).

Table 3. Observed data for the moon at 2008/3/20 ~24.
#Angle,directiondate, JST timeSPM
158.6, 152.4 deg3/20, 23:19148 mg/m3
224.7, 256.13/21, 4:28155
343.1, 169.83/24, 1:51349


Figure 7. The spectrum of the moon at 31.769N, 119.970E at 2008/3/20 ~24.The number of curves is in Table 3. The Dn is the difference between curve #1 and #n in the Table 3.

スペクトルはl=570 ~630nm部の光の強度を一致させるようにした.この帯域にSPMは特徴ある吸収をもたないため,この帯域のスペクトル強度を合致させ,同一入射光量のスペクトルに換算する.l=530, 580nmの吸収はデジタルカメラのモザイクフィルタの特性で対象物の吸収ではない.逆にそれを利用し波長の位置合わせを行った.
Figure 3と比較するとFigure 7のスペクトルはB成分が多くl=460nm,490nmに吸収帯がある.この吸収は月の高度が高い程顕著である.上空に青色光を吸収する物質が局在すると考えられる.この吸収帯に関する文献は無かったが類似の観測状況について,海面からの反射光についての報告があった.それは以下であった.
B成分領域の吸収については極軌道衛星に搭載されたSea Wide Field Sensorによる海水射出放射輝度値が含炭素,硫酸エアロゾル存在 (人為的な汚染源の存在) が予測される海域で412nmの値が490nmの値に較べて低下する[14].
R成分は月の高度にあまり依存しない.すなわち低空のSPM濃度は高くないように見える.しかし地上のSPMは148-349mg/m3と高濃度である.高濃度SPMが薄層であることを推測させる.

3. 2 3/26, 31.220N, 121.467E地点測定

3/26, 31.220N, 121.467Eの測定結果をTable 4, Figure 8に示す.

Table 4. Observed data for the moon at 2008/3/26.
#Angle, directiondate, JST timeSPM
134.9, 187.0 deg3/26, 4:1168 mg/m3
231.3, 203.45:1455
326.6, 213.96:0072


Figure 8. The spectrum of the moonlight at 31.220N, 121.467E at 2008/3/26.The number of curves corresponds to that of Table 4.The Dn is the difference of #1 and #n, which is multiplied by 3.

Figure 8では曲線1 ~3の相違は僅かである.スペクトル差を明示するため曲線D2, 3は縦方向に3倍されている.Figure 7 (155km西方) との相違は,上空のSPM濃度が高いこと,地上SPM濃度が1/2 ~1/5であるのにB成分が小さいことである.SPM移流を西方からとすれば,揚子江流域には運河,沼が多いため,水蒸気を吸着し粒の状態が変化している可能性は否定できない.
これらは畠山らの測定[7, 8]とは異なる.彼らの測定が2003年12月 ~2004年1月の昼間であること,SPMの流線が北方からであること,我々の測定が2008年3月末の夜間であること,大気を採取する方法とスペクトル観測の手段の相違があること.どちらも短時間の測定で時間経過を観測していない点が原因である.
仰角大のときSPM濃度が高くなる可能性をシミュレーションした.二次元正方格子 (200×200) をとり,それを0<=x<=5, 0<=y<=2空間に割り当てる.格子間隔を横方向250m,縦100mとすると水平50km×高さ20kmの空間となる.視程の最大値と対流圏の厚さ10kmから考えて妥当である.原点x=y=0を観測点とする.Gaussian:

により空中のSPM分布を表す.最大SPM分布がA=0.7, B=0.0にある時とA=0.7, B=0.7にあるときのα=8の場合をFigure 9に示す.Figure 9の横軸は仰角[deg],縦軸は観測されるSPM濃度である.0kmの曲線はSPMが地上にある場合,7kmの曲線はSPMが高度7kmにある場合の見かけのSPM濃度を表す.観測点からSPM中心までの距離はともに7kmである.SPM分布の高度は仰角とSPM濃度指標に反映されることが分かる.


Figure 9. Estimated relations of the SPM density and angle.

3. 3 5/16 ~17, 31.932N, 131.420E地点測定

5/16 ~17, 31.932N, 131.420E地点で前節と同様の測定を行った.結果をFigure 10に示す.同図の曲線2 ~7はスペクトル差である.Figures 7, 8のD2, 3曲線に対応する.相互に比較すると大気の月光吸収の相違は顕著である.Figure 10ではR成分が多く曲線の変化が月の高度に依存している.l=490, 550nmの吸収帯は仰角が10度以下になると著しくなり,人為的なSPM生成源の存在を示している.宮崎気象台観測[3]では5/16, 21:00, 晴,視程15km, 5/17, 3:00, 快晴,視程8kmである.風向は5/16, 22:00北東風から西風に変わり,5/17, 0:00から風速が1.5→2.5m/sと変化した.スペクトルを測定した時刻の気象状況は,西風が卓越し快晴となり視程が8kmに低下したことを示し,SPMが上空に流入してきたことを推察させる.
Figure 10の曲線6,7ではl=460nmの吸収帯は顕著でなく660 ~680nmで散乱強度が大である.すなわちR成分の多い大気であって地表近くのSPM濃度が高いことを示している.しかし地上のSPMはFigure 7に較べて1/2 ~1/5の濃度である.スペクトル強度差はそれ程違わない.すなわちFigure 7 (1082km西方) のSPMとは成分が違う.同様にFigure 8 (947km西方) と較べても,地上SPM濃度は同程度であるが,スペクトルは全く違いSPM成分が違う.

Table 5. Observed data for the moon at 2008/5/16 ~17.
#Angle, directionDate, JSTtimeSPM on the ground
138.0, 218.8 deg5/16, 23:3473 mg/m3
233.1, 226.85/17, 0:0872
322.8, 238.71:0980
417.9, 243.11:3678
513.1, 246.92:0174
610.2, 249.12:1674
78.1, 250.62:2778


Figure 10. The difference spectrum of the moonlight, from 23:54 of 2008/5/16 to 2:27 of 5/17.

3. 4 6/13 ~14, 31.932N, 131.420E地点観測

3.3節と同地点で同様の測定を6/13 ~14に実施した.そのときの大気は梅雨季の南九州特有の豪雨の合間の高湿度の状態であった.空中SPMは豪雨により洗浄されて少ないと思われたのでこの測定を行った.
宮崎気象台の観測では6/13, 20:00南風1.9m/sが21:00には西風2.2m/sに変化している.曇天で視程は10kmである.22:00 ~0:00風向の変化はない.3.3節の観測とほぼ同じ条件である.地上のSPM濃度は21時から70mg/m3台に増大した.撮影データ等をTable 6, スペクトルをFigure 11に示す.

Table 6. Observed data for the moon at 2008/6/13 ~14.
#Angle, directionDate, JSTtimeSPM
143.4, 180.6 deg6/13, 20:1452 mg/m3
241.9, 195.721:0171
339.3, 205.521:3477
436.0, 213.822:0569
527.4, 227.923:0773
621.3, 234.823:4472
717.3, 238.66/14, 0:0773


Figure 11. The difference spectrum of the moon, from 20:14 of 2008/6/13 to 0:07 of 6/14.The curve numbers correspond to the # in Table 6. The 0-line is #=1.

Figure 11の曲線2 ~7は月の仰角からFigure 10の曲線2 ~4と比較できる (ともに差スペクトルである).Figure 11ではR成分が少なく,23:00以前はB成分も小さくない.地上SPM濃度はほぼ同じで,視程は少し良く10kmである.以上の観測から空中SPMは5/16-17とは成分が違う.550nmの吸収帯は消失しSPMは白色に近い.気象状況から塵埃ではなく水滴と考えられる.

3. 5 高度10kmの空のB/R, G/R比測定

32N, 122 ~130Nの高度約10kmの太陽と反対方向の散乱光強度を航空機 (MU761) から撮影しB/R, G/R比を計測した.航空機の外部から空を観測できなかったのでB/R, G/R比測定により相対的SPM濃度変化を推定した.結果をFigure 12に示す.


Figure 12. The B/R and G/R ratios of the sky against the sun over the East China Sea.The day is 2008/3/27, the height is ~10km, and the time is JST. The airplane left from Shanghai at 10:58 and arrived at Kagoshima airport (31.803N, 130.717E) at 12:10, JST.The left side from the pixel number 1400 is the troposphere and the right side is the stratosphere.

航空機は西から東へ経度8度755km飛行した.11:18の位置は124E; 11:37, 127E; 11:50, 129Eである.高度は貨物室の気圧計見ると一定に保たれている (Figure 13).


Figure 13. Change of atmospheric pressure in the cargo of MU761.

地上から空を撮影した場合B/R比が4を超えることはないが (Table 2と付録B参照),航空機では窓越しであるにもかかわらず最大8に達し水平線位置 (pixel=1400) で極小である.Figure 13の横軸0 ~1400pixelは対流圏である.B/R値の最大は2.5に達しない.付録Bの海上の空のB/R値と比較すると妥当である.
B/R比により水平線を境界として成層圏対流圏が識別できる.成層圏に眼視的に霧は見られなかったがB/R比は東へ行くほど減少した.太陽と反対の北方向を撮影しているのでMie散乱光の影響は極小である.可能ならば逆方向の空を撮影すべきであるがそれはかなわなかった.
B/R比は成層圏のSPM濃度が東に行くほど増大したことを示す.同じ窓を通して撮影しているのでこの相違は有意である.東シナ海の海塩粒子かSPMの水蒸気吸着による粒子径増大が考えられる.後者の散乱係数の湿度依存性 (粒子の膨潤) については小笠原父島の地上観測[16]で報告されている.ただし,その現象が成層圏で起こりうるものなのか不明である.成層圏のH2SO4粒子 (SPM) は岩坂[17]に記載されている.東経120度以西のSPMが成層圏で変化している状況報告はない.東経138度以東では航空機から付録CのFigure C1のような黒い霧に包まれた上層雲を見かける.

4 まとめ

我々はデジタル一眼レフカメラで月光のスペクトルと空の色相を撮影し,夜と昼の空中SPM濃度についての知見を得る方法を示した.スペクトルを得るための簡易かつ利便性のある回折系の制作方法,色相の定量化とSPM濃度の関連性を示した.両方法とも外部電源を必要とせず個人でも高速測定ができる.それらの方法を使い,北緯32度,東経120 ~130度間の空中SPM濃度を計測した.
測定日時,場所も違う大気中のSPMのスペクトルを測定し相違を検出したことになるが,我々は下記の点を問題と考える.
  1. 東経120度以西では仰角大の方がSPM濃度が高いことがある.物理的には小仰角の方がSPM濃度は高くなるが,強い上空の風に乗りSPM塊が流れているのならば,そういう状況がありうる.ライダーの実況[10]ではそういうSPMを数kmの高度に見ることがある.今後の精密観測の必要性を示唆する.
  2. 仰角大のときの月光スペクトルのB成分領域に顕著な吸収帯がある.仰角小ではその吸収帯がなまる.低空ほどSPM含有大気を長距離を光が通過するので種々のSPMの吸収の平均となる.仰角の大きい月光スペクトルで特異な吸収帯があることはSPM分布の局在性を示す.そのような事例は,2007年11月から十数回月光スペクトルを測定しているが,東経130度以東には一例もない.今後の東経120度以西の月光スペクトルの精密測定が必要性である.
  3. 東経120度以西では地上のSPM濃度と低空のスペクトルのR成分との間にはあまり関連がない.東経131度では地上のSPM濃度が高い場合は低空ほどR成分が多くなりB成分は激減し橙色の月になる.2007年11月から十数回の観測では,豪雨後を除き,例外はない.
  4. 東経120度以東の成層圏でSPMの状態が変化している.この現象が恒常的に起こっているか否かは不明である.継続観測が必要である.
以上の事実はSPMの性質が経度10度,約1100kmを移動する間に空中で変化していることを推測させる.その変化は従来,粒子径の膨潤と考えられている[9, 16].しかし膨潤効果だけではl=460, 490, 550nmのスペクトル吸収の変化を説明できない.岩坂は注目すべき研究結果を発表している[18].
SPM核 ( ~0.2mm) を含んだ径 ~0.6mmの水滴(その電子顕微鏡画像は文献[17]p.112にある)とSO2, NO2, O3分子の量子化学計算によるSO42-イオンのUV吸収帯の裾野が460nm付近まであるかの研究が今後の課題である.

本研究の一部は,地球環境研究総合推進費H19地球環境研究革新型研究課題浮遊粒子状物質 (SPM) および大気汚染物質の脳型多変量解析技法の開発 (FY2007−FY2008) 代表:神部順子の補助を受けている.

参考文献

[ 1] 鵜野伊津志「九州から東日本の広域光化学オキシダント汚染について」九州大学広報室,九州大学応用力学研究所,
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2007/2007-05-16.pdf
[ 2] 大原利眞, アジアで増えるNOxと光化学オゾン, 科学, 78, 7272-728 (2007).
環境省大気汚染物質広域監視システム,Atmospheric Environmental Regional Observation System : AEROS,
http://soramame.taiki.go.jp/Index.php.
[ 3] 気象庁 (Japan Meteorological Agency),
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php, (2008.6).
[ 4] 三好猛雄, 高見昭憲, 下野彰夫, 畠山史郎「長崎県福江島におけるエアロゾルの大気中濃度および粒径の観測」大気環境学会年会講演要旨集44, pp.110-111 (2003).
[ 5] 酒巻史郎, 畠山史郎, 金城義勝「平成14年度冬季集中観測時の沖縄での地上観測結果」大気環境学会年会講演要旨集44, pp.112-113, (2003).
[ 6] 笠原三紀夫,東野進 編, エアロゾルの大気環境影響, 京都大学出版会, 京都 (2007), pp.114-136, 4.1節 畠山史郎, ISBN978-4-87698-698-9.
[ 7] 畠山史郎, 高見昭憲, 王瑋, 湯大鋼「中国上海周辺における大気汚染物質の航空機観測」大気環境学会年会講演要旨集44, pp.116-117, (2003).
[ 8] 片山学, 大原利眞, 鵜野伊津志, 村野健太郎, 畠山史郎, 冬季・九州地域で観測された高濃度エピソードに対する中国メガシティの影響, 大気環境学会誌, 42, 175-187 (2007).
[ 9] 笠原三紀夫,東野進 編, エアロゾルの大気環境影響, 京都大学出版会, 京都 (2007), pp.152-168, 4.3節 杉本伸夫.
[10] Nobuo Sugimoto, Atsushi Shimizu, "Lidar homepage",
http://www-lidar.nies.go.jp/, National Institute Environmental Studies.
[11] We used the following camera resources; Pentax K-100D super, DA 21mm F.3.2 Limited, FA 50mm F1.4, and The image processing engine, ver.3. We compare the RGB curves that are obtained from scanning of sky-images, and confirm the color characters of the lenses are the same.
[12] 吉田正太郎, 屈折望遠鏡光学入門, 誠文堂新光社, 東京 (2005), pp.216, ISBN4-416-20518-X.
[13] 国土地理院 (Geographical Survey Institute Japan), http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html, (2008.6), where we can estimate the coordinate of the observed point. We got Kaeda point of Miyazaki 31.798N, 131.413E.
[14] 国立天文台暦計算室
http://www.nao.ac.jp/koyomi/koyomix/koyomix.html
[15] 笠原三紀夫,東野進 編, エアロゾルの大気環境影響, 京都大学出版会, 京都 (2007), p.179, 5.2節 福島甫.
[16] 笠原三紀夫,東野進 編, エアロゾルの大気環境影響, 京都大学出版会, 京都 (2007), p.314, 8.2節 兼安直樹.
[17] 安成哲三,岩坂泰信 編, 岩波講座地球環境学3大気環境の変化 2節, 岩波書店, 東京 (1999), pp.99-103.
[18] 岩坂泰信, 黄砂は何を運んでくるのか, 科学, 78, 729-735 (2007).

付録A デジタルカメラの受光素子入力光量と全画素平均輝度値との関係

デジタルカメラの受光素子入射光量と全画素平均輝度値との関係を調べるための撮影機材と設定条件を示す.
カメラ:
Pentax K100D super,ISO感度を200 (最低値) に固定,マニュアル設定.
レンズ:
FA50mm F1.4,撮影絞22,Kenko Foggy A付加,焦点距離45cm (最短) に固定.シャッター速度1/4000 ~1/60s (14段階).
画像ファイル形式:
12ビットRAW.現像条件,色温度=太陽光,色彩強調なし,色調変更なし,増減感なし.
撮影地点と方向:
宮崎大学工学部E棟7F703室より南方向の空,仰角20deg固定.
対象地点:
宮崎市加江田渓谷上空.
時刻:
2008.9.24, 10:15,気温28.0℃,湿度72%,北北東の風1.6m/s,薄曇ヘイズあり,全天日射時間1時間あたり0.6時間,全天日射量1.57MJ/m2
受光素子の入射光量と全画素積算値との関係をFigure A1に示す.全画素の取り方:R, B成分1画素,G成分2画素(ベイヤー配列)である.図の両軸の単位は最小入力光量時の値を1とした比である.受光素子の応答はほぼ対数的で単調増加性が存在する (対数増幅回路があるので本変化は妥当である).


Figure A1. The relations between the incident light quantities and the response of pixels.

付録B 海面上空のB/R, G/R比と地上SPM濃度値との対応表

B/R, G/R値と地上SPM濃度との対応を示す.下記条件の下で観測された.
観測地点:
宮崎大学工学部E棟7F東側側面より東方向の空,海面からの仰角20deg固定.対象の空:宮崎市東方日向灘上空.
SPM測定地点:
宮崎県衛生環境研究所 (宮崎市学園木花台2丁目).測定方法はb線吸収法である.

Table B1. An example between B/R, G/R ratios and SPM density on the ground.
SPM濃度B/R値G/R値日時天候
12 mg/m32.351.518/11,11:48fine
261.591.277/9,10:12fine, hazy
391.611.277/8,10:59fine
651.261.138/5,10:47haze

Table B1の日時はすべて2008年である.b線吸収法で測定すると宮崎市の夏の気候では湿度の影響を受けやすいレーザ光散乱方式に比べ経験的に約1/2の濃度となる.Table B1の8/11の眼視での空の状況は一般的表現で「抜けるような青空」であった.それでもB/R値は2.35である.本文のTable 2の8mg/m3 (b線吸収法なら ~4mg/m3) の空の清浄度がいかに極限に近かったかが分かる.我々は2007年1月から1.8年間空を観察し7k枚の空の画像を得たがそれ以上清浄な空はなかった.
Table B1の7/8,7/9の測定ではSPM濃度が高いにもかかわらずB/R値は逆になっている.G/R値は同じである.それはSPMの成分が違うことを示している.わずか1日の経過でもB/R比がSPM濃度に比例しない場合があることを警告する意味で記した.

付録C 石廊崎 (34.6N, 138.9E) 東方太平洋上の汚染雲画像


  1. 撮影時刻と場所
    2008.9.17, 13:30 (JST, SNA56) より南方向,高度10.7kmから降下中.石廊崎 (34.6N, 138.9E) 東方太平洋上.
  2. 撮影条件 Pentax K100D super, FA50mm, 航空機窓ごし.
  3. RAW現像条件 太陽光,画像編集なし.
  4. カラー強調処理,1ピクセルの輝度をRGBとするとき,平均値A= (R+G+B)/3を求め,Aとの差を次式により強調する.
    ここでf は係数 (パラメータ) でR', G', B'が0 ~255の範囲に入るように決定する.下図ではf =2.2である.
このようにして輝度値を変換したカラー強調画像をFigure C1に示す.


Figure C1. Clouds wrapped by dark dust.The picture is got by a color enhanced processing.The clouds are found over the Pacific Ocean east of Iro-cape. The day and time are 2008.9.17, 13:30, JST.


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