
Figure 1. Changes of the SPM density [mg/m3] at Funazuka, Miyazaki-city between 2007/3/27~4/4. The resolving for the time is 7.5 min.
Figure 1,ピークAでは22.5分でSPM濃度が72mg/m3から651mg/m3へ増大した.ピークA現象は眼視的には濃霧である.それは1.6時間続いた.この間の宮崎気象台(測定点から0.9km西方)では西の風2.8m/sである.ゆえに幅16kmのSPM塊が通過したと考えられる.同時刻のMSAT衛星IR1バンドの11mmの遠赤外放射画像[14]では宮崎地方に放射を遮る雲/霧は見出せない.地表面に近い霧である.現象の規模はメソ(meso)のレベルである.その規模の構造はピークCにも存在する.ピークCをGaussian分解した結果をFigure 2に示す.

Figure 2. Gaussian expansions for the peak C in Figure 1.
ピークCは4つのサブピークに分かれる.それぞれの特徴をTable 1に示す.SPM塊を動かす原因は大気流動である.それは風速に現れる.それから考えるとG1, G2, G4は同一の大気塊中のSPM塊である.3/30は黄砂飛来日で,当日の最大SPM現象はピークCのみである.従って黄砂にはメソ構造がある.
Table 1. Characters of the G1~G4 sub-peaks in Figure 2.
| Name | SPM(time) | half-peak | Wind[m/s] | Width |
|---|---|---|---|---|
| G1 | 40*(4:56**) | 4:11-5:41** | 9.3, W | 50 km |
| G2 | 82 (7:26) | 6:11-8:41 | 9.0, W | 81 |
| G4 | 20.5 (9:26) | 8:41-10:30 | 8.2, W | 41 |
| G3 | 42 (11:11) | 9:56-12:18 | 0.7, W | 6 |
大気境界面とSPM構造の関係を調べる.SPM以外にも微細水滴,氷片,水蒸気も大気流動と共に動いている.それらの時間変化をFigure 3に示す.

Figure 3. Relations among the SPM, the humidity and the temperature observed at Funazuka, Miyazaki city, 2008/4/24.
Figure 3を見ると,17~20時の間にSPM塊の通過が観測されている.SPM濃度の変化はFigure 2の場合と違い急激である.この時の大気の状況を他の気象データから推定する.Hum.曲線の段差(矢印)に注目する.2008/4/24, 15:30, 17:00, 20:00に3種類の大気境界面が通過している.ここでは時刻順に第1~3境界という.
第1境界では寒冷,湿潤な大気が流入した境目である.SPM濃度は不変である.第2境界では温度は不変でより湿潤でSPM濃度の高い大気の流入である.第3境界ではより寒冷,乾燥,低SPM濃度大気の流入である.デジタル粉塵計,温湿度ロガーの併用で大気の境界面(不可視)が識別できる.宮崎気象台観測の風向風速の変化をTable 2に示す.
| Time | Pressure | Wind sp. | Direction | Width |
|---|---|---|---|---|
| 12 h | 1008.4 hPa | 7.5 m/s | W | |
| 13 | 1008.1 | 6.0 | WSW | |
| 14 | 1008.0 | 5.3 | W | |
| 15 | 1007.6 | 5.9 | WSW | |
| 16 | 1008.0 | 3.6 | E | 19km |
| 17 | 1008.7 | 4.7 | ENE | |
| 18 | 1009.4 | 4.8 | ENE | 42km |
| 19 | 1010.0 | 2.2 | ENE | |
| 20 | 1011.2 | 4.2 | W | |
| 21 | 1012.3 | 3.1 | WSE | |
| 22 | 1013.0 | 2.4 | WSE | |
| 23 | 1013.2 | 2.0 | W | |
| 24 | 1013.5 | 1.7 | WNW |
風速から計算した大気塊の幅は19, 42kmである.
大気の流れには複数の階層構造があり気象現象もその階層により分類される.大気中の水蒸気の現象にメソ構造があるようにFigure 1~3のSPM時間変化を見る限りSPM流動にもメソ構造が存在すると考えられる.黄砂塊の存在は独立行政法人情報通信研究機構[15]が発表している.

Figure 4. A monochrome picture of SPM in the sky of Kaeda-hill in Miyazaki, at 2007/3/28, 11:24 [JST].
Figure 4はRAW現像ソフトウェアでコントラスト強調処理が施されている.その上にモノクローム化時にRGB成分をZ=(B+2G+R)/4とし,このZ(16ビット)をRGB成分に代入し8ビットとした.その操作は受光素子の熱雑音を減じかつB成分の寄与が減るため解像度とコントラストが向上する.一般のレンズはB領域の収差補正がG領域に比べて悪いので上記の効果が現れる.したがって眼視よりもSPMの存在は明らかである.しかしまだ明瞭ではない.より明瞭な画像を得るため,我々は次のようにピクセル(pixel)値を変換した.
1) RAW現像ソフトの出力画像をTIF 8ビット形式とし,ファイル・コンバータでRGB形式に変換しFortranプログラムでbinary形式でopenし,書式なしREAD文で読みRGB 3成分からR成分を抽出した.
2) ピクセルのR成分値を{Xi}と書くと,

である.画像のどの部分に写っているか分からないSPMを強調するために,画面の至る所コントラスト強調処理を施す.すなわち,

とする.ここでnは経験的に決定する定数である.有効数字は目的の画像の調子により変化する.当然撮影機材によっても変わる.我々の経験ではn=1.2~1.6が適切であった.XinではなくaXi(aは定数)でも良いがデジタルカメラの高輝度部は実照度に比べ輝度値の増加が抑制されているのでコントラスト強調効果は低下する.
3) 式(3,4)により画像の規格化を行い,{ Yi' }をファイルに出力する.

この規格化は式(2)より不要に思われるかも知れないが,右辺のXiの値によっては[Ymin, Ymax]が[0, 255]にならない場合がありうる.僅かな確率で,効果も画素値の範囲を小拡大するだけであるが悪影響はないので使用した.
Figure 4のR成分をn=1.51で画像化したものをFigure 5に示す.

Figure 5. A modification picture of the R-image of Figure 4, when the modify parameter is n=1.51.
式(2)による画像強調処理は有効に作用し黄砂は低空の霧のように明確になった.丘陵を越えて流入してきた黄砂は不定形で高濃度の中心部と周辺部からなる.その分布はFigure 2のGaussian分布と矛盾しないが,さらに詳細な構造があるように見える.
希薄な周辺部では小さな雲(矢印)の生成が見られた.雲は5分で消滅した(雲の詳細は付録参照).雲生成はその付近の大気が湿潤であることを示すが,湿潤な大気もまたSPMと一緒に流動している.雲が生成した理由は湿潤なSPMを含む大気が丘陵地帯を通過する際,地形により上空に押し出され冷却されたことを示す.雲の位置は丘陵地帯の稜線にあると考えられる.
Figure 5の画角は横58.5度,縦41.0度である.丘陵は国土地理院1/25000地形図「日向青島」のくん鉢山(標高500m)の東尾根で標高178~388mである.尾根の中央部(標高260m)までの撮影点宮崎大学工学部E棟7Fからの距離は2.5kmである.Figure 5の中央下部の小さな雲の高度は仰角(7.62度)から計算すると590mである.Figure 1のピークAのSPMが低空の霧であったことと対応しているように思う.
式(2)の剰余関数によりpixel値255を超える高輝度部はいったん0に戻る.それゆえ画面に白黒の不連続曲線が描かれる.そのような曲線は一般写真では有害であるがSPMの分布を知るためには有用である.曲線が滑らかであるときSPMは均一分布である.曲線が急激に曲がり波打っているときは特徴的なSPM分布がある.Figure 5の丘陵部に近い空では曲線が波打っている.そこでは画像では明確ではないがSPMが存在する.
同日の黄砂は西風により宮崎平野に流入し日向灘に抜けた.黄砂の背面をFigure 6に示す.

Figure 6. The yellow sand (A) and the accompaniment haze (B) on the Huge-nada (Pacific Ocean near Miyazaki prefecture), at 2007/3/28, 15:18. The image is trimmed; whose angle of view is 42.05×25.73 [deg].
Figure 6では撮影点(宮崎大学工学部E棟7F)から東方向を撮影した.海岸線まで3.6kmである.宮崎市衛生環境研究所に設置されている環境省大気汚染物質広域監視システム[16]のSPM観測値は13[mg/m3]であった(撮影点で黄砂が通過したことを示す).
黄砂本体(A)は水平線の上0.817度にある.黄砂までの距離を宮崎地方気象台15時の視程20km[17]とすると高さは290mである.随伴ヘイズ(B)極大部の高度は1.3kmである.式(2)のnは1.354である.その値は黄砂本体とヘイズの極大部の形状を明確にするためにパラメータとして最適化した.両者の極大中心部は一致していない.黄砂の二層化がかなり前に起こり,高度により大気の流れが異なっていたことが分かる.
画像の極大部の判定にはレンズの周辺光量の考察が必要である.撮影レンズ(f=21mm)のF9.5の時の光量はFigure 7であった.Figure 7の縦灰色線の間がFigure 5の画角である.中央部と周辺部の最大光量差は-3%である.充分な精度がある.
2007/3/28, 15:20青島アメダス[9]は南南東の風2[m]を記録している.図では右から左へ風が吹いている.上空ほど風が強いとするとヘイズの濃度極大部が本体に比べ左側にズレているのは妥当である.
Figure 5は海に沈む黄砂の終末の状況を表している.

Figure 7. The change of the brightness for retro-focus type wide lens, f=21mm F=9.5. Curve A: observations, B: optimized cos-4 lines, C: theoretical cos-4 lines for non retro-focus type wide lenses.

Figure 8. Atmospheric plane wave detected by the mist on the boundary hills between Kagoshima and Miyazaki prefectures, at 2008/2/20, 17:59 [JST].
次に日向灘上空の海塩粒子(推測)を核としたヘイズ(霞より高濃度なので以下ヘイズという)と大気の流れをFigure 9に示す.
本図の画像作成式は式(2)の代わりに式(5)~(7)を使用した.

代替式は境界が黄砂より明確でない空中に拡散したSPMに対して効果的である.式(5)~(7)は式(2)よりも濃淡の緩やかな(白黒が交替の)境界線を生成する.
ヘイズは空中に拡散しているので,立体的な構造を見るにはRGB三成分を使用し,光の透過性の相違を利用する.Figure 9はパラメータa=16で計算したヘイズのRGB3画像である.画角は縦(20.4度)×横(13.7度)である.太陽光球はFigure 9の各画像右端上方向である.
2008/2/27, 8:40の青島アメダスの記録は北西の風6[m/s]快晴である.9:00宮崎気象台の観測の視程は30[km],9:00宮崎市衛生環境研究所に設置されている環境省大気汚染物質広域監視システムのSPM観測値は9[mg/m3]である.快晴で視程も良いが太陽方向の空は高濃度のヘイズであった.

Figure 9. The atmosphere mixing of convections on the sea and three flows in the sky, which are detected by the mist on Huga-nada, at 2008/2/27, 8:37 [JST].
Figure 9の撮影点(東経131.415153度,北緯31.828148度)から画像右下のビル(東経131.461152度,北緯31.806148度)まで5.0km方位角139度(南西方向)である.B画像で海面が明瞭であるので視程30kmは妥当である.
R画像のL1層に注目する.この層はG, B画像に無い.R画像は長波長光の映像なので遠方の光景まで記録される.従ってL1層は陸地から遠い海上にある層である.高知大学気象情報ページの同時刻の衛星(ひまわり6号)可視画像[18]には宮崎沖太平洋上には北西の風に沿った筋状の雲列が見られる.その雲列と直角に横縞模様の山岳波状雲が存在する.L1層はその雲と考えられる.
L2層に注目する.L2層はR>G>B画像の順に明瞭である.L3層はB>G>R層の順に明瞭である.従って下の層ほど遠方にある.
陸上の風向は北西である.画面手前から奥に向かって吹いている.L2, L3層間の縞の傾きを直線で図中に記入した.傾きはRGB画像で異なる.この傾きを説明するには上空の風は北西より北向きでなければならない.衛星可視画像に該当する雲はないが,水蒸気画像では北北西と西方からの二種類の水蒸気の流れが存在する[18].従ってRGB画像間の傾きの相違は妥当である.以上,L2~L3層間の大気層は奥行きがある.
B部分に注目する.R画像で顕著でB画像では明瞭ではない.ゆえに海上の大気構造である.しかし受光素子前面のマイクロレンズの影響を考えると,画面通りの球状構造かどうかは分からない.この相違は陸風(B画像のB部分の境界を淡くしている上昇気流)と海風の相違を示していると考えている.
以上ヘイズの可視化から大気の流動について情報を得ることができる.
本研究は財団法人鉄鋼業環境保全技術開発基金環境研究助成金(代表者:中山榮子)により成された. 本研究の一部は,地球環境研究総合推進費H19地球環境研究革新型研究課題浮遊粒子状物質(SPM)および大気汚染物質の脳型多変量解析技法の開発(FY2007−FY2008)代表:神部順子の補助を受けている。

Figure A1. A1 Tentative clouds are grown from the high density SPM and the super-saturated atmosphere.The image is from the west supper sky at Miyazaki University, when the time is 2008/10/16, 11:25 [JST]. The camera is Nikon D40x (IR-enhanced), f=50mm. The sensitive region is 750-1000nm.