空の色相とエアロゾル散乱光の関係

青山 智夫, 神部 順子, 長嶋 雲兵, 中山 榮子


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1 はじめに

現在,大気汚染は北半球全域に拡散している.北極スモッグ[1, 2],黄砂,東南アジアのブラウン・ヘイズ[3]などの気象現象として知られている.それらの事例以外にも各地で大気汚染に関連する気象現象が起こっている可能性がある[4].
我々は2006年以降,宮崎市でデジタルカメラを使用して空の色の変化を調べた.その結果,空の青さが次第に減少している.特に2007年秋以降,太陽方向の青色の低下が著しい.その他,眼視的な現象として希薄な上層雲が多くなったこと,視程10 km前後の霞の日が多くなったことが挙げられる.それらは大気中の浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter: SPM)濃度の増大を示す.宮崎市に大規模なSPM発生源はなく自動車台数も増えていない.増加したSPMは移流してきたと考えざるを得ない.
大気汚染観測点は環境省がAtmospheric Environmental Regional Observation System (AEROS)を全国に展開している.しかし,アメダス[5]に比べ観測点が少ない,都市部の偏在性も問題である.データの公開方法も気象統計情報に比べると見劣りする.ライダー観測点[6]も少なすぎる.現在,南九州,四国に観測点はない.
そのような貧弱な観測状況の下,宮崎市唯一のオキシダント(Oxidant, OX)観測点,自治学院において2009年に入りOX濃度100 ppb以上の観測値が報告されるようになった.OX濃度の環境基準値は60 ppb以下である.そのレベルの濃度は2008年春から特異的ではなくなった.OX濃度ほどではないがSPM濃度も次第に増加して,2007年以降は宮崎市のSPMは東京世田谷区よりも高濃度である.従来の大気汚染の常識が通用しなくなって来ていると考える.
以上の状況を考えると,空の色相を記録し,相互に比較する方法を定義し,一般人が大気の状態を記録できる手段を提示する意味がある.近年,デジタル機器の発達は著しく,現象を記録する手段としてデジタルカメラを採用することが最適と思われる.我々はデジタルカメラで「何を観測しているのか」を議論する.
環境問題は慢性的に状況が悪い方向に進行することが多いのに対策は容易でない場合がほとんどである.従って,多くの人々が大気汚染に関わる気象現象を記録し,汚染の進行が自分たちに関係する深刻な事態であると認めることが大切と考える.従来,空中のエアロゾル観測は人工衛星とライダーを使って行われてきた[7].しかし,それらの結果と眼視的気象現象との対応が成されていない.デジタルカメラで記録できる現象は人工衛星とライダーで観測出来るそれより少ないが,それでも大気中のエアロゾル濃度増大に関連する現象を観測できる.それらを以下に示す.

2 空の色の調査方法

デジタルカメラで対象物を撮影し画素PijごとにそのRGB成分Pij(r), Pij(g), Pij(b)を抽出すれば対象物の色は3次元空間の一点{Pij(r), Pij(g), Pij(b)}として定まる.RGB成分の物理的意味は,

である.ここでE(l)は対象物の反射光で,波長lの関数で,単位は[lm]である.Kは定数で683 [lm.W-1]である[8].R(l)はカメラの3色分解フィルタのR成分抽出関数(Rフィルタの波長透過関数)である.R(l), G(l), B(l)関数形は公表されていない.実測するか理想的な関数形を推測する.
Commission Internationale de l'Eclairage (CIE)のXYZ表色系の色度座標{X, Y, Z}は,

である.A~Cの添字ijは画素Pの添字に対応する.~x, ~y, ~zは等エネルギー単色放射の三刺激値でlに関するベクトルで公表されている[8].ここでA~C, ~x, ~y, ~zの単位について考察する.
式(1)が基準であるから,E(l)がどの単位でも([lm]ではなく気象学で使う[J]であっても)式(3)は積分記号の前にK'なる係数があるべきである.しかしA~Cは単独で用いることはなく,色度座標{X, Y, Z}を決定する式(2)の比を算出するための作業的な変数である.ゆえにK'なる係数を省略して無次元量として扱って良い.~x, ~y, ~zについても同様である.これは対象物からの反射光の強度によって色相が変わらない,色度座標{X, Y, Z}は不変である,という物理的な根拠に対応する.
文献[8]のベクトル表示の400~650 nmの三刺激値をFigure 1に示す.


Figure 1. Triple stimulation values for monochrome emissions.

Figure 1の~x, ~y, ~z曲線の交点は580, 500 nmでデジタル一眼レフカメラのRGB成分の感度を示す曲線[9]の交点と同じである.RGB色相変換[10],

により色相角H [deg]を計算するとFigure 2を得る.


Figure 2. A relation between the hue and monochrome emissions.

RGB境界(Figure 2の縦線)が500, 580 nmであるのは色分離という観点からは妥当である.しかしFigure 2の波長と色相角の関係に問題が無いわけではない.たとえば,波長400~470 nm間では色相角はほとんど変化しない.その間に複数の異なる現象があったとすると識別は難しい.現象の強度を色相の変化として計測するのなら,波長の変化に対し色相角は線形に変化することが望ましい.この線形性を満足する色相系の文献は発見できなかった.我々の考察を付録Aに示す.
Figure 1から~x = R(l)とするのは~yと重なる部分が大きいので,現実との差が大きいかも知れない.しかし他に根拠のあるR(l)が無いので,あえて~x, ~y, ~z曲線(関数)をR(l), G(l), B(l)と考えた.E(l)を空からの入射光とするとRayleigh散乱の特徴から,

である.ここでkは定数である(式(5)は共にエネルギー次元を有す量,[lm]と[nm]の間の関係である).Figure 1と文献[2]を比較するとR(l), G(l)の重なりは現実のデジタル一眼レフカメラよりも大きい.その影響はG/R比を計算するとき,同比を1に近づけるように働く.
~x, ~y, ~z関数が規格化されている場合,各nについて式(5)を計算し,

として,B/RG/R,B/G比[9, 11]を計算するとFigure 3を得る.
市販されているデジタル一眼レフカメラ(Pentax K100D super + DA 21mm F3.2)で実際の空を撮影すると,対流圏B/R比は最大3.9であった.Figure 3からn = -4.2である[11].n < -4.0となる理由を付録Bに考察した.G/R比は実測は2.1で,Figure 3では1.7である.G/R比が式(6)から小さく計算されるのはR(l), G(l)の重なりが大きいことに原因がある.


Figure 3. B/R, G/R, B/G ratios calculated from eqs.(3)~(6).

以上,細部の相違があるが空を撮影しRGB成分を抽出してB/RG/R比を計算すると対象物の反射光の波長依存性が分かる.
大気中を通過した太陽光強度の波長依存性は,符号を逆にすると大気中の微粒子のオングストローム指数[12]に相当する.同指数の実測値は綾里(39.046N, 141.795E)では1.22,与那国島(24.462N, 122.983E)では1.05,南鳥島(24.287N, 153.981E)では0.79である[12].n~-1である.
Mie散乱強度は波長の-2~0に比例すると言われているので,大気中に観測対象の粒子が多くなった極限の状態(Mie散乱 > Rayleigh散乱)ではn = -1と考えられる.Figure 3からそのときのB/R比は1.3である.B/R比が1.3の空は日本では2008年以降,太陽方向に時々出現する.そのとき,大気はヘイズと呼ばれる状態で白濁しているが,空には青色が残っている.さらにヘイズが濃くなるとB/R比は1.0に接近し,空は青色から灰色に変わっていく.
以上,B/R比は空中の微粒子による散乱光の波長依存性を示す.G/R比はB成分をG成分に置換した量なので同様の波長依存性を示す.ただしFigure 2よりB成分は470 nmより短波長側では対象物の反射光の波長の相違が色相角をほとんど変化させないが,G成分の500~580 nm区間では色相角の変化は線形に近い.したがってエアロゾル成分の相違が反映されうる.ゆえにG/R値も記録することが望ましい.

3 ヘイズ時の大気スペクトル

微粒子散乱光の波長依存性以上の情報を得るには空を分光観測する必要がある.一般の人々が使える小型で可搬性のある大気分光装置は市販されていない.自作方法は文献[9, 13]にある.我々は自作の大気散乱光スペクトル強度計測器を使用して2008/3/16, 10:23宮崎大学工学部(31.828N, 131.415E)から東方向日向灘上空,水平仰角3 degの空を計測した.当該時刻の空は眼視ではヘイズでB/R = 1.03, G/R = 1.00であった.空は青くなく白濁していた.
散乱光スペクトル強度計測器の核である分光モジュールは浜松フォトニクス製のC9407MAである.波長分解能は±9 nmである.フォトン蓄積時間は300 ms,100回計測し平均値を取った.集光装置の受光角は2.9 degである.同時刻の気象データ[5]は,青島アメダス(31.803N, 131.458E)で10分間の日照時間10分,気温17.3 °C,東南東の風2.0 m/s,宮崎気象台(31.938N, 131.413E)の天候は10時薄曇,湿度60 %,9時の視程15 kmであった.宮崎県環境衛生研究所(31.833N, 131.415E)の大気中の浮遊粒子状物質濃度33 mg/m3,宮崎県自治学院(31.909N, 131.425E)のオキシダント(Oxidant)計では11時のOX濃度40 g/m3であった[14].いずれも最近接の大気測定点である.自治学院と環境衛生研究所の3/16, 1:00~3/17, 8:00の大気の状態をFigure 4に示す.Figure 4は10:23の大気のOX濃度が高いことを示している.


Figure 4. The atmosphere pollutions of Miyazaki-city of 2008/3/16. They are observed by Atmospheric Environmental Regional Observation System of Ministry of Environments in Japan.Observed points: OX, SPM_j, NOx are Jichi-Gakuin point, and SPM is Enveronmental laboratory of Miyazaki prefecture.

2008/3/16, 10:23 [JST]測定の日向灘上空仰角3 degの空の散乱光スペクトルをFigure 5に示す.


Figure 5. Scattering spectra of the sky over Hunganada (a domestic name of the Pacific Ocean). The observed day and time are 2008/3/16, 10:23. It was haze in a fine day's sky. The observation point is the University of Miyazaki (31.828N, 131.415E), and the angle is 3 deg.

Figure 5中のfunc.曲線は,

をプロットしたものである.式(7)の数値780, 340は分光器の上下限波長[nm]である.その他の数値は最適化して求めた.Figure 5のdiff.曲線がヘイズ・スペクトルの高周波成分である.Plankの黒体輻射の式[15] (h = Plank定数, k = Boltzman定数, c = 光速, T = 黒体の絶対温度とする),

をパラメータ(b, g)修飾したFitting関数,

を適用すべきと思われるかも知れない.最初我々はそれを採用したが,快晴の青空とヘイズの空は波長依存性が相当に異なり,高周波成分の抽出がうまく出来なかった.いろいろ試行した結果が式(7)の関数である.低周波成分を除去するために,関数形試行条件はdiff.曲線が全体として直線になることである.
大気を通過した太陽光のスペクトルについてはWebに資料[16]がある.そこから米国エネルギー省National Renewable Energy Laboratory (NREL)のデータ[17]に行きエクセル形式のスペクトル・データをダウンロードできる.その中のGlobal tilt [Wm-2/nm]の380~780 nm部分を編集してFigure 6に示す.Figure 6のA吸収帯はAバンド(760 nm)でO2の吸収,WはH2O分子の変角振動による吸収帯である[18].


Figure 6. The standard solar spectra through the atmosphere.

Figure 6中の吸収帯を短波長側からN~Uと命名しFigure 5の各吸収帯に対応させた.記号Aの吸収帯はA bandである.Figure 5の吸収帯はほぼ全てFigure 6と対応がつくが,G吸収帯の対応がつかない.Gは広帯域吸収帯である.また620 nm付近まで広がっているように見えることを考慮するとO3のChappuis band [19]の可能性がある.同bandの最大吸収波長は600 nmである.本論文のような簡易分光器でChappuis bandが現実の大気中に見出せる可能性は低いかもしれない.しかし理科年表の大気の減光では波長600 nmの減光係数は 空気>ごみ>O3の順で,O3は全減光の25 %である[20].また付録Bで示したように清浄な空の散乱光の波長依存性がB/R > 3.8となりRayleigh散乱以外の要因が推測されることを考えるとChappuis bandの可能性があると思う.

4 黒い大気層

快晴の空中に微かな黒い大気層の存在を2008/9/8から計5回撮影した.最も顕著な2008/12/12, 9:31の場合をFigure 7に示す.Figure 7はRAWファイルを何の強調処理も行わずに画像化したものである.青空の僅かな色調の違いにより微かな黒い大気層が分かる.


Figure 7. A dilute black layer in the atmosphere of a pure fine sky. This is the original image photographed by Pentax K100D super with D_FA 100mm F2.8. The target is the boundary hills between Miyazaki and Kagoshima prefectures. The origin is Faculty of Engineering of University of Miyazaki, and the day and time are 2008/12/12, 9:31, JST.

黒い大気層を平均値(R+2G+B)/4で単色化し線画諧調法[21]により強調した結果をFigure 8に示す.この平均の根拠は,黄砂と違い,同大気層を赤~赤外域では明瞭に画図化できないためである.


Figure 8. The dilute black layer emphasized by a line-shade drawing method. The base is the sum of G/B-elements of the figure 7 image.

Figure 8の縦の赤線部に該当する画素のRGB値をFigure 7のオリジナル画像からデジタイズした結果をFigure 9に示す.仰角2 degの位置に明らかに散乱光の弱い(黒い)大気層が存在する.この層はG成分で顕著である.もしアルベドの低い水滴ならば式(5)においてn~0であるからB曲線の凹みがG曲線以上になる.またエアロゾルの少ない大気層としてもB曲線の凹みがG曲線以上になる.
普通の白い雲では背景の青空に比べるとRGB成分が凸で,背景からの変化の大きさの順序はR>G>Bである.また,あまり知られていないがRGB成分が凹で,順序がB>G>Rの黒い雲もある.白雲,黒雲の差は雲粒子のアルベドの違いである.
黒い大気層の部分にはエアロゾルが存在し,それが500~580 nmの光を吸収していると考えられる(Figure 5のG吸収帯と同じ).


Figure 9. RGB values along the red line in Figure 8. There is a SPM layer at the angle of 2 deg. A trough of 5.9 deg shows damaged elements of CCD.

5 B/R, G/R二色画像法

4節の黒い大気層の空間分布もまた大気中のSPMの性質を示す.そのためには,線画階調法[21]以上の強調法を考案する必要がある.画像コントラストを上げると光学系(レンズのcos4q則や鏡筒の影響)の周辺光量の影響が大きくなる.それゆえ直接RGB値から画像化できずB/R, G/R比のような周辺光量の影響が少ない量から画像化する必要がある.
対流圏ではB/R比は[0, 5]区間, G/R比は[0, 3]区間である.それを[0, 255]区間にスケーリングし,実数を整数に変換する.整数値を1バイトのB, G成分とする.R成分は一定値とする(我々は(-110)10を採用).このようにしてカラーの二色画像を得ると,周辺光量の問題は無いが低コントラストの画像になり大気層を明示できない.その点を改良するために閾値を使う変換を導入した.

変数m, q1, n, q2は現象ごとに異なり,計算された画像を見ながら最適化する.この操作は現象を恣意的観点で「見る」ことになる.したがって本来の画像(本論文ならばFigure 7)をディスプレイ上で確認しながら,非常に低コントラストで印刷上問題なのでそれを改善する目的に限り適用する.
以上,閾値変換まで含めた画像処理法をB/R, G/R二色画像法(two color method)という.Figure 7B/R, G/R二色画像法(m = 1.35, q1 = 0.006, n = 1.12, q2 = 0.003)の結果をFigure 10に示す.{m, n}の値はFigure 3n = -1に対応する.Figure 10G/R = 0で表示される大気部分がFigure 9のG成分曲線の凹みの空間分布である.分布の形状から気体ではない.快晴の大気中にこのようなSPM層が存在することを示した報告はない.関係のある文献は畠山ら[3]と新聞記事[4]と考える.
B/R = 0の曲線はG/R = 0分布と異なり構造を示さない.大気が接地層から自由大気層に連続的に移り変わる際,採用したm, q1, n, q2の組み合わせによって描かれた曲線である.


Figure 10. Black-mist layers shown by the B/R, G/R two color method. The original is Figure 7.

6 まとめ

デジタルカメラで記録できる可視光域の現象は人工衛星やライダーの観測領域に及ばず,精度も8ビットである.しかし,デジタルカメラの受光素子自身は12~14ビットの精度がある.それはRAWファイル情報として画像化(TIF画像変換)時に使用できる.従ってRAW現像ソフトの機能を最大限に利用し,かつTIF画像情報を自作ソフトで式(10)のような変換を行えば,大気中のO3を検出できるか否かのレベルまでは到達できる.
一方,デジタルカメラの可搬性,利便性は他機器の到底およばない処である.したがってデジタルカメラを利用する大気汚染観測法を開発することは有意である.我々はこの観点から大気中のSPM濃度を観測する方法を考案した.すなわちデジタルカメラにより空の色相を記録し相互比較する一つの指標B/R, G/R比を定義した.その物理的意味を考察し,B/R比がエアロゾルを含む大気の散乱光強度の波長依存性に関係する量であること,G/R比がエアロゾル成分の相違を示し得る量であることを示した.
現在,大気中のエアロゾル濃度は次第に増大している.黄砂現象がデジタルカメラで撮影できることは公知である[22].我々はそれ以外のエアロゾル現象の撮影可能性を試み,最近時々現れる大気中の黒い微かなSPM層を示した.その層の可視化は非常に困難であった.我々は光学系の周辺光量低下に依存しないB/R, G/R二色画像法を提案した.この方法は画像化のための人為的な閾値を導入する.したがって適用に注意が必要であるが,極めて希薄な大気層を表示できる.
B/R, G/R比の測定は簡便で費用もかからない.多くの人々が本法を利用し,大気中のSPMを継続的に記録し,汚染の進行を確認することができる.

本研究は財団法人鉄鋼業環境保全技術開発基金環境研究助成金(代表者:中山榮子)により成された.本研究の一部は環境省の地球環境研究総合推進(RF-073)の支援により実施された。

参考文献

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[ 2] 石弘之, 岩波新書地球環境報告II, 岩波書店, 東京 (1998).
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[ 4] 庄司直樹,鈴木暁彦,「asahi.com,環境,茶色い雲,越境」2008.3.27
http://www.asahi.com/eco/wars/TKY200810180161.html
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http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php
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[13] 長嶋雲兵, 青山智夫, 神部順子「大気散乱光スペクトル強度計測器」,産業技術総合研究所より特許出願中,(2009.1.26)
[14] 環境省大気汚染物質広域監視システム,Atmospheric Environmental Regional Observation System : AEROS
http://soramame.taiki.go.jp/Index.php
[15] 河村哲也, 大気の科学, 山海堂, 東京 (2003), p. 113, 4-381-01676-9.
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2008/8/17作成
[17] Home page of National Renewable Energy Laboratory (USA)
http://rredc.nrel.gov/solar/spectra/
[18] 柴田清孝, 光の気象学, 朝倉書店 (1999), p. 70, 4-254-16701-6.
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[21] 青山智夫, 神部順子, 長嶋雲兵,中山榮子, 波長760-1000nmで検出される大気エアロゾルの分布, J. Comput. Chem. Jpn., 8, 139 (2009).
[22] 青山智夫, 神部順子, 長嶋雲兵,中山榮子, 浮遊粒子状物質の可視化:画像的アプローチ, J. Comput. Chem. Jpn., 8, 13-22 (2009).
[23] AstroArts co. ltd.
http://www.astroarts.co.jp/

付録A: 線形色相

光の波長(l)と色相が線形に対応する方式について考察する.波長を[400, 650 nm]区間とする.等エネルギー単色放射の三刺激値の関数系R(l), G(l), B(l)はGauss関数を採用すれば,

とするのが妥当である.ここで定数r, g, bは三色の最大感度波長である.[400, 650 nm]区間を当分して3定数を定め,r = 608, g = 525, b = 442 nmを得る.RGB合計出力Sを,

とする.線形の色相を実現するためS関数を広い波長区間で~1になるようにパラメータaを決定する.我々はa = 0.00047を得た.本論Figure 1に相当する波長とRGB応答関数図はFigure A1である.


Figure A1. Linear RGB response functions for monochrome emissions.

Figure A1S曲線から1±0.1の範囲は[420, 630 nm]で波長依存性がほぼなく,現象強度を線形応答として捉えられることがわかる.RG, GBの交差波長は570, 480 nmとデジタルカメラのそれより10~20 nm短波長側にずれる.この三色分解を色相Aとする.
空間Aの欠点は現象を捉える波長域が狭い点である.波長域を拡大するにはr, b定数を長短のどちらかの波長側にずらせば良いが,その反面S曲線の線形性は低下する.またR(あるいはB)関数の全域が現象を捉えるために使えなくなる.それは波長域を拡大できる利点を無意味にしかねない問題である.そこでR関数の切り捨てられた650 nm以上の長波長側を400 nmの短波長側に折り返す.すなわち式(A1)を,

とする.bS曲線の変動を小さくするためのパラメータである.我々はa = 0.0004, b = 0.25を得た.以上の処理は赤青の間に新しい色,紫を導入することである.すなわち色相環が成立する.こうしてFigure A2を得る.これを色相Bと呼ぶ.色相BのRG, GB交差点は580, 490 nmである.現行のデジタルカメラに近い.ただしR,B成分の関数形は400 nm付近では違う.
色相Bの欠点は入射光の強度と出力値の線形性が色相Aに較べて劣る点である.それは波長域拡大を色数の増加なしに実現したことから来る.


Figure A2. Expanded linear RGB functions with a purple attribution.

線形色相Bの色相角は式(4)によって計算できる.Figure A3にそれを示す.波長[400, 650 nm]間で色相角がほぼ直線的に変化している.色相角も310 degまで増加する(レンジが広い).400 nm付近で紫色の定義が違うことがここに現れている.以上が命名の由来である.
Figure A3を本文のFigure 2と比較すると,この色相表現系が計測に適すことが分かる.


Figure A3. Hue angle calculated by the linear hue method B.

導入した線形色相A, Bの撮像系で空の散乱光のB/R, G/R比を計算した(Figure A4).


Figure A4. Wave length dependency with the scattering ray in the sky.

Figure A4より無SPMの空,Rayleigh散乱光のみの場合(n = -4)の本来のB/R値は3.6,線形色相AのB/R値は3.3,色相Bでは3.0である.これらの値について非常に興味深い事実があるので付録Cに記す.
これが色相方式の相違が最も大きい場合である.SPMの散乱光(Mie散乱)の波長依存性はn = -2~0である.3種類の色相でほぼ同じB/R値を示す.理想的な線形色相系の結果とデジタルカメラのそれとはほとんど違わない.ゆえに空中のSPMの存在をB/R値で判定して問題がない.
ここでデジタルカメラの受光素子の周辺ハードウェアを考察する.受光素子自体は波長360~800 nm域で十分高感度である.製品のばらつきを考慮しても[380, 780 nm]域は実用的である.この範囲ではH2O, O2の吸収が650 nm以下よりも顕著に観測できる(Figure 5参照).また380 nmにはNO2の吸収帯がある.したがって[380, 780 nm]の範囲をカバーする計測カメラは非常に有効ではないかと考える.
観測波長帯域が400 nmになると三原色では色分離精度が低下する.現行のモザイクフィルタの三原色分離列はRGB成分に1, 2, 1要素使用している.従ってG成分が冗長と言えば言える.四原色{B, G, R, IR}としても問題は無い.ただし撮影レンズの色収差補正は[360, 800 nm]域で行わなければならない.G領域で良く収差補正して見かけの分解能を向上させることはできない.
波長域[380, 780 nm]の線形色相系は次である.

RGB成分では式(A1~A3)を使用する.パラメータ{ir, r, g, b} = {750, 640, 530, 420 nm}, a = 0.00026, b = 0.2を得た.これを線形色相Cと命名する.特徴をFigures A5, A6に示す.


Figure A5. 4-color system response functions for monochrome emissions.

色相角は次式で求めた.

ここでk = 45である.これらの式は三原色のRGB-HSV変換の拡張である.


Figure A6. Hue angle calculated by the linear hue method C. The 3-color linear hue method B corresponds to the inner box area.

四原色線形色相系は広範囲の波長域で優れた線形応答性と線形色相角特性を有する.本来ならば,このような受光特性を持つ計測デジタルカメラでB/R, G/R, IR/R比を観測すべきであろう.
R成分を分母にするのは三原色カメラとの整合性のためと,IR成分がAバンドを含んでいるためである.

付録B: n < -4.0の空

我々が観測した中にB/R = 3.9[11]の空があった.B/R値からn = 4.2である.Rayleigh散乱以外の原因を考察することも必要である.O3は可視部にChappuis bandを持つ.それ以外の物質の可能性も考察した.しかしO3以外の可能性はないと考える.n = -4.0の場合に10 %のO3吸収がある場合の波長毎の散乱光強度をFigure A7に示す.


Figure A7. Scattering intensity ratio in case of 10 % absorption in Rayleigh scattering.

Figure A7からO3の吸収があると空の散乱光は500 nmより長波長側でn = -4.5の曲線に接近する.ただしこの事実から「大気中(含成層圏)のO3が観測できた」とはできない.デジタルカメラの計測が「ある程度の精度がある」ことを示しているのみである.

付録C: デジタルカメラの輝度測定

デジタルカメラは計測器ではないので,「印象的な画像」が得られるように対象物からの反射光の輝度を内臓画像処理エンジンで非線形変換する.すなわち画素の輝度値は対象物の真の「明るさ」を示していない.そこが天体観測用の冷却CCDカメラとの違いである.
しかしデジタルカメラも冷却CCDカメラも受光素子は同じフォトダイオード・アレイである.従ってカメラのRAWファイルの中の受光素子からの信号値を直接読めば,そこに非線形変換前の「対象物からの反射光の真の輝度値」がある筈である.
そのためにはAstroArts co. ltd.のStellaImageというソフトウェアが必要である[23].このソフトは一部のメーカのRAWファイルの中のRGB変換前のベイヤー配列データを読みFITSファイル形式で出力する.FITSファイルはRGBファイルにヘッダ部分が付加したような形式なのでFortran/C言語でbinaryファイルとして読むことができる.
この方法で我々は最高のB/R比を示した空[11]の色相を解析した.結果をFigure A8に示す.


Figure A8. B/R and G/R ratios of the standard sky [11]. These ratios are calculated directly by reading of signals from the CCD device in the digital camera. The non-linear transformations, i.e., RGB conversions, are not used.

付録Aより,Rayleigh散乱光のみのときB/R値は線形色相Aでは3.3,色相Bでは3.0であるが,Figure A8のB/R値はそれらに近い値となることが分かる.文献[11]のPentax画像処理エンジンの変換の非線形性は著しいものではない.G/R値はFigure 3では1.7でFigure A8のG/R値も同じである.
これらの結果はデジタルカメラのメーカ提供の標準処理からB/R, G/R値を求めると,真の値よりも少し大きくなるが「とんでもない値にはならない」ということを示している.


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