


Figure 1. Triple stimulation values for monochrome emissions.
Figure 1の~x, ~y, ~z曲線の交点は580, 500 nmでデジタル一眼レフカメラのRGB成分の感度を示す曲線[9]の交点と同じである.RGB色相変換[10],

により色相角H [deg]を計算するとFigure 2を得る.

Figure 2. A relation between the hue and monochrome emissions.
RGB境界(Figure 2の縦線)が500, 580 nmであるのは色分離という観点からは妥当である.しかしFigure 2の波長と色相角の関係に問題が無いわけではない.たとえば,波長400~470 nm間では色相角はほとんど変化しない.その間に複数の異なる現象があったとすると識別は難しい.現象の強度を色相の変化として計測するのなら,波長の変化に対し色相角は線形に変化することが望ましい.この線形性を満足する色相系の文献は発見できなかった.我々の考察を付録Aに示す.
Figure 1から~x = R(l)とするのは~yと重なる部分が大きいので,現実との差が大きいかも知れない.しかし他に根拠のあるR(l)が無いので,あえて~x, ~y, ~z曲線(関数)をR(l), G(l), B(l)と考えた.E(l)を空からの入射光とするとRayleigh散乱の特徴から,

である.ここでkは定数である(式(5)は共にエネルギー次元を有す量,[lm]と[nm]の間の関係である).Figure 1と文献[2]を比較するとR(l), G(l)の重なりは現実のデジタル一眼レフカメラよりも大きい.その影響はG/R比を計算するとき,同比を1に近づけるように働く.
~x, ~y, ~z関数が規格化されている場合,各nについて式(5)を計算し,

として,B/R,G/R,B/G比[9, 11]を計算するとFigure 3を得る.
市販されているデジタル一眼レフカメラ(Pentax K100D super + DA 21mm F3.2)で実際の空を撮影すると,対流圏B/R比は最大3.9であった.Figure 3からn = -4.2である[11].n < -4.0となる理由を付録Bに考察した.G/R比は実測は2.1で,Figure 3では1.7である.G/R比が式(6)から小さく計算されるのはR(l), G(l)の重なりが大きいことに原因がある.

Figure 3. B/R, G/R, B/G ratios calculated from eqs.(3)~(6).
以上,細部の相違があるが空を撮影しRGB成分を抽出してB/R,G/R比を計算すると対象物の反射光の波長依存性が分かる.
大気中を通過した太陽光強度の波長依存性は,符号を逆にすると大気中の微粒子のオングストローム指数[12]に相当する.同指数の実測値は綾里(39.046N, 141.795E)では1.22,与那国島(24.462N, 122.983E)では1.05,南鳥島(24.287N, 153.981E)では0.79である[12].n~-1である.
Mie散乱強度は波長の-2~0に比例すると言われているので,大気中に観測対象の粒子が多くなった極限の状態(Mie散乱 > Rayleigh散乱)ではn = -1と考えられる.Figure 3からそのときのB/R比は1.3である.B/R比が1.3の空は日本では2008年以降,太陽方向に時々出現する.そのとき,大気はヘイズと呼ばれる状態で白濁しているが,空には青色が残っている.さらにヘイズが濃くなるとB/R比は1.0に接近し,空は青色から灰色に変わっていく.
以上,B/R比は空中の微粒子による散乱光の波長依存性を示す.G/R比はB成分をG成分に置換した量なので同様の波長依存性を示す.ただしFigure 2よりB成分は470 nmより短波長側では対象物の反射光の波長の相違が色相角をほとんど変化させないが,G成分の500~580 nm区間では色相角の変化は線形に近い.したがってエアロゾル成分の相違が反映されうる.ゆえにG/R値も記録することが望ましい.

Figure 4. The atmosphere pollutions of Miyazaki-city of 2008/3/16. They are observed by Atmospheric Environmental Regional Observation System of Ministry of Environments in Japan.Observed points: OX, SPM_j, NOx are Jichi-Gakuin point, and SPM is Enveronmental laboratory of Miyazaki prefecture.
2008/3/16, 10:23 [JST]測定の日向灘上空仰角3 degの空の散乱光スペクトルをFigure 5に示す.

Figure 5. Scattering spectra of the sky over Hunganada (a domestic name of the Pacific Ocean). The observed day and time are 2008/3/16, 10:23. It was haze in a fine day's sky. The observation point is the University of Miyazaki (31.828N, 131.415E), and the angle is 3 deg.
Figure 5中のfunc.曲線は,

をプロットしたものである.式(7)の数値780, 340は分光器の上下限波長[nm]である.その他の数値は最適化して求めた.Figure 5のdiff.曲線がヘイズ・スペクトルの高周波成分である.Plankの黒体輻射の式[15] (h = Plank定数, k = Boltzman定数, c = 光速, T = 黒体の絶対温度とする),

をパラメータ(b, g)修飾したFitting関数,

を適用すべきと思われるかも知れない.最初我々はそれを採用したが,快晴の青空とヘイズの空は波長依存性が相当に異なり,高周波成分の抽出がうまく出来なかった.いろいろ試行した結果が式(7)の関数である.低周波成分を除去するために,関数形試行条件はdiff.曲線が全体として直線になることである.
大気を通過した太陽光のスペクトルについてはWebに資料[16]がある.そこから米国エネルギー省National Renewable Energy Laboratory (NREL)のデータ[17]に行きエクセル形式のスペクトル・データをダウンロードできる.その中のGlobal tilt [Wm-2/nm]の380~780 nm部分を編集してFigure 6に示す.Figure 6のA吸収帯はAバンド(760 nm)でO2の吸収,WはH2O分子の変角振動による吸収帯である[18].

Figure 6. The standard solar spectra through the atmosphere.
Figure 6中の吸収帯を短波長側からN~Uと命名しFigure 5の各吸収帯に対応させた.記号Aの吸収帯はA bandである.Figure 5の吸収帯はほぼ全てFigure 6と対応がつくが,G吸収帯の対応がつかない.Gは広帯域吸収帯である.また620 nm付近まで広がっているように見えることを考慮するとO3のChappuis band [19]の可能性がある.同bandの最大吸収波長は600 nmである.本論文のような簡易分光器でChappuis bandが現実の大気中に見出せる可能性は低いかもしれない.しかし理科年表の大気の減光では波長600 nmの減光係数は 空気>ごみ>O3の順で,O3は全減光の25 %である[20].また付録Bで示したように清浄な空の散乱光の波長依存性がB/R > 3.8となりRayleigh散乱以外の要因が推測されることを考えるとChappuis bandの可能性があると思う.

Figure 7. A dilute black layer in the atmosphere of a pure fine sky. This is the original image photographed by Pentax K100D super with D_FA 100mm F2.8. The target is the boundary hills between Miyazaki and Kagoshima prefectures. The origin is Faculty of Engineering of University of Miyazaki, and the day and time are 2008/12/12, 9:31, JST.
黒い大気層を平均値(R+2G+B)/4で単色化し線画諧調法[21]により強調した結果をFigure 8に示す.この平均の根拠は,黄砂と違い,同大気層を赤~赤外域では明瞭に画図化できないためである.

Figure 8. The dilute black layer emphasized by a line-shade drawing method. The base is the sum of G/B-elements of the figure 7 image.
Figure 8の縦の赤線部に該当する画素のRGB値をFigure 7のオリジナル画像からデジタイズした結果をFigure 9に示す.仰角2 degの位置に明らかに散乱光の弱い(黒い)大気層が存在する.この層はG成分で顕著である.もしアルベドの低い水滴ならば式(5)においてn~0であるからB曲線の凹みがG曲線以上になる.またエアロゾルの少ない大気層としてもB曲線の凹みがG曲線以上になる.
普通の白い雲では背景の青空に比べるとRGB成分が凸で,背景からの変化の大きさの順序はR>G>Bである.また,あまり知られていないがRGB成分が凹で,順序がB>G>Rの黒い雲もある.白雲,黒雲の差は雲粒子のアルベドの違いである.
黒い大気層の部分にはエアロゾルが存在し,それが500~580 nmの光を吸収していると考えられる(Figure 5のG吸収帯と同じ).

Figure 9. RGB values along the red line in Figure 8. There is a SPM layer at the angle of 2 deg. A trough of 5.9 deg shows damaged elements of CCD.


Figure 10. Black-mist layers shown by the B/R, G/R two color method. The original is Figure 7.
本研究は財団法人鉄鋼業環境保全技術開発基金環境研究助成金(代表者:中山榮子)により成された.本研究の一部は環境省の地球環境研究総合推進(RF-073)の支援により実施された。



Figure A1. Linear RGB response functions for monochrome emissions.
Figure A1のS曲線から1±0.1の範囲は[420, 630 nm]で波長依存性がほぼなく,現象強度を線形応答として捉えられることがわかる.RG, GBの交差波長は570, 480 nmとデジタルカメラのそれより10~20 nm短波長側にずれる.この三色分解を色相Aとする.
空間Aの欠点は現象を捉える波長域が狭い点である.波長域を拡大するにはr, b定数を長短のどちらかの波長側にずらせば良いが,その反面S曲線の線形性は低下する.またR(あるいはB)関数の全域が現象を捉えるために使えなくなる.それは波長域を拡大できる利点を無意味にしかねない問題である.そこでR関数の切り捨てられた650 nm以上の長波長側を400 nmの短波長側に折り返す.すなわち式(A1)を,

とする.bはS曲線の変動を小さくするためのパラメータである.我々はa = 0.0004, b = 0.25を得た.以上の処理は赤青の間に新しい色,紫を導入することである.すなわち色相環が成立する.こうしてFigure A2を得る.これを色相Bと呼ぶ.色相BのRG, GB交差点は580, 490 nmである.現行のデジタルカメラに近い.ただしR,B成分の関数形は400 nm付近では違う.
色相Bの欠点は入射光の強度と出力値の線形性が色相Aに較べて劣る点である.それは波長域拡大を色数の増加なしに実現したことから来る.

Figure A2. Expanded linear RGB functions with a purple attribution.
線形色相Bの色相角は式(4)によって計算できる.Figure A3にそれを示す.波長[400, 650 nm]間で色相角がほぼ直線的に変化している.色相角も310 degまで増加する(レンジが広い).400 nm付近で紫色の定義が違うことがここに現れている.以上が命名の由来である.
Figure A3を本文のFigure 2と比較すると,この色相表現系が計測に適すことが分かる.

Figure A3. Hue angle calculated by the linear hue method B.
導入した線形色相A, Bの撮像系で空の散乱光のB/R, G/R比を計算した(Figure A4).

Figure A4. Wave length dependency with the scattering ray in the sky.
Figure A4より無SPMの空,Rayleigh散乱光のみの場合(n = -4)の本来のB/R値は3.6,線形色相AのB/R値は3.3,色相Bでは3.0である.これらの値について非常に興味深い事実があるので付録Cに記す.
これが色相方式の相違が最も大きい場合である.SPMの散乱光(Mie散乱)の波長依存性はn = -2~0である.3種類の色相でほぼ同じB/R値を示す.理想的な線形色相系の結果とデジタルカメラのそれとはほとんど違わない.ゆえに空中のSPMの存在をB/R値で判定して問題がない.
ここでデジタルカメラの受光素子の周辺ハードウェアを考察する.受光素子自体は波長360~800 nm域で十分高感度である.製品のばらつきを考慮しても[380, 780 nm]域は実用的である.この範囲ではH2O, O2の吸収が650 nm以下よりも顕著に観測できる(Figure 5参照).また380 nmにはNO2の吸収帯がある.したがって[380, 780 nm]の範囲をカバーする計測カメラは非常に有効ではないかと考える.
観測波長帯域が400 nmになると三原色では色分離精度が低下する.現行のモザイクフィルタの三原色分離列はRGB成分に1, 2, 1要素使用している.従ってG成分が冗長と言えば言える.四原色{B, G, R, IR}としても問題は無い.ただし撮影レンズの色収差補正は[360, 800 nm]域で行わなければならない.G領域で良く収差補正して見かけの分解能を向上させることはできない.
波長域[380, 780 nm]の線形色相系は次である.

RGB成分では式(A1~A3)を使用する.パラメータ{ir, r, g, b} = {750, 640, 530, 420 nm}, a = 0.00026, b = 0.2を得た.これを線形色相Cと命名する.特徴をFigures A5, A6に示す.

Figure A5. 4-color system response functions for monochrome emissions.
色相角は次式で求めた.

ここでk = 45である.これらの式は三原色のRGB-HSV変換の拡張である.

Figure A6. Hue angle calculated by the linear hue method C. The 3-color linear hue method B corresponds to the inner box area.
四原色線形色相系は広範囲の波長域で優れた線形応答性と線形色相角特性を有する.本来ならば,このような受光特性を持つ計測デジタルカメラでB/R, G/R, IR/R比を観測すべきであろう.
R成分を分母にするのは三原色カメラとの整合性のためと,IR成分がAバンドを含んでいるためである.

Figure A7. Scattering intensity ratio in case of 10 % absorption in Rayleigh scattering.
Figure A7からO3の吸収があると空の散乱光は500 nmより長波長側でn = -4.5の曲線に接近する.ただしこの事実から「大気中(含成層圏)のO3が観測できた」とはできない.デジタルカメラの計測が「ある程度の精度がある」ことを示しているのみである.

Figure A8. B/R and G/R ratios of the standard sky [11]. These ratios are calculated directly by reading of signals from the CCD device in the digital camera. The non-linear transformations, i.e., RGB conversions, are not used.
付録Aより,Rayleigh散乱光のみのときB/R値は線形色相Aでは3.3,色相Bでは3.0であるが,Figure A8のB/R値はそれらに近い値となることが分かる.文献[11]のPentax画像処理エンジンの変換の非線形性は著しいものではない.G/R値はFigure 3では1.7でFigure A8のG/R値も同じである.
これらの結果はデジタルカメラのメーカ提供の標準処理からB/R, G/R値を求めると,真の値よりも少し大きくなるが「とんでもない値にはならない」ということを示している.