森先生追悼講演会・お別れ会を終えて

中野 隆・笹金光徳

  こんなに多くの人が出席するなんて!森和英先生追悼講演会が始まったときに思ったことでした.大学の有名教授や企業の有力者ではない森先生の会に出席される方は,森先生の人柄や業績に引かれて集まる人たちであり,このように多数の方が出席された事がまさに森先生の真実の評価です.
  追悼講演会は5月16日,高千穂大学タカチホホールにて開催されました.出席者総数は60余名で,講演会と追悼会の2部構成でした.第1部の冒頭に森先生が研究責任者であったWCSC(早稲田計算科学コンソーシアム)の会長鈴木一成先生よりご挨拶がありました.引き続き森先生の研究の素晴らしさを紹介する5名(立川先生,齋藤先生,笹金,香川先生,中野)による講演が行われ森先生の多岐にわたる研究業績が紹介されました.出席者自身が直接係わっている分野以外における先生の活躍を知り,皆改めて森先生の研究スケールの大きさに感銘を受けていました.
  第2部では立食形式による追悼会が行われ,出席者から生前の森先生の素晴らしさや楽しいエピソードなどが紹介されました.会の最後に実弟の森昌広氏から挨拶があり,森先生の急逝の状況のご説明や会への謝辞がありました.
  出席者の心の中に森先生は生きている,そのような思いが感じられる追悼講演会でした. 講演会の中で私たちも述べたことですが,森先生はあの穏やかな人柄の裏側に激しい情熱と怒りも合わせ持っていらっしゃいました.そして,不公平感が増大傾向にある現代社会を憂いておられたように思います.奇しくも森先生が逝去された2009年は,「脱官僚政治」を掲げた民主党が衆議院選挙で大勝し,政権交代が起こった年として後年に語りつがれることでしょう.特にどこかを批判するという意図はありませんが,官僚主導の政治・経済活動が継続的に行われる中で,若者の「理科離れ」が進んでしまったのは,事実です.さらに,そういった社会の中で自然科学界は正しい道を歩んできたのでしょうか.「業績のための研究」や「研究派閥のための人事」はなかったでしょうか.研究予算・補助費は研究の質に比例して分配されてきたでしょうか.こういったことと理科をつまらなく感じる若者が増えたことに関係は無いのでしょうか.
  「森先生の死」と「政権交代」というコインシデンスを経験してしまったこの一年をふりかえりながら,自然科学の魅力を淡々と語って私たちをいつも惹きつけていた森先生に感謝しつつ,これから自然科学の魅力を若い世代に伝え,風潮を好転させることが,私たちの使命であり,森先生への恩返しだと思えてなりません.


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