編集後記

横浜市立大学・立川仁典

 年度末になると、大学の研究室では卒業論文・修士論文に追われるため、一種独特の緊張感が漂います。指導教員としては、一喜一憂しながらも学生の原稿修正に追われますが、修正し過ぎて文脈が繋がらなくなった時、「森さんだったら、どんな風にストーリーを作り上げるのだろうか。」、と良く考えました。昨年、2009年1月10日(土)午前1時27分、メーリングリストで森先生の訃報を知ったのも、まさのそのような思いで学生原稿を修正していた時でした。

 森先生の訃報に直面した際、多くの事が想い起こされました。研究面ではFVMO法にはじまり、多成分系分子軌道法の開発や実装でのバグ取り、水素結合系同位体効果の結果の解釈など、そして教育面では麻布大学でのコンピュータ実習など、数え上げればきりがありません。森先生との議論では、横道にそれることも多々ありました。時には途方も無く思えるような内容でも、後々考えると大変造詣が深く、なるほど、と納得させられることもしばしばでした。晩年、森先生がよく使っていた言葉の「偶然信仰」も、その一つかもしれません。2008年12月に、森先生が最後にメーリングリストに投稿された文章をご紹介させていただき、編集後記の〆とさせていただきます。

 最後になりますが、「森和英先生追悼号」の発刊にご尽力いただきました、長嶋雲兵先生、後藤仁志先生はじめ、J. Comput. Chem. Jpn.誌編集室の皆様に感謝申し上げます。  森先生、どうぞ安らかにお眠りください。ご冥福をお祈りいたします。

2008年12月25日(木)のメーリングリストより:

[偶然信仰について]

「偶然」を観察していると、どう考えても「偶然」に思えない。
その繰り返しを経験しているうちに、考えてもわからないので、
とりあえず「偶然」を楽しむことにしました。
すべての物事に無関係なことは無いという結論にも達しました。

これから、(囲碁は知りませんが、)「布石は遠く打て」が
面白いように感じられ、無関係に思われることを結びつける訓練が
大好きになり、論理的に固まった「同じこと」の繰り返しは
苦しいです。

さらに、楽しいことも辛いことも悲しいこともすべて、
何か「意味(意図)」があり、その先に通じるヒントに
なっているような気がします。

来年は、活動を復活したいですね、
そして奇抜な手を打ちたいですね。

よろしく。
そして、よいお年をお迎えください。

では。


故 森 和英 先生


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