演 題 計算化学学習のためのWebページ作成
発表者
(所属)
○本間善夫,橘美和子*(県立新潟女子短期大学,*新潟大学工学部)
連絡先 〒950-8680 新潟県新潟市海老ヶ瀬471 県立新潟女子短期大学
TEL: 025-270-0299 FAX:025-270-5173
E-mail:
キーワード 計算化学,HTML,plug-in(プラグイン),環境ホルモン
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
化学教育の場でも多用されるようになってきた計算化学ソフトウェアの使用方法の基礎をWebページで学べるようにし,計算演習例として染料合成実験で用いる試薬や生成物,環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)を取り上げてわかりやすく紹介した。
環 境 適応機種名 インターネットWWWが利用可能なパソコン等
O S 名  
ソース言語 HTML
周辺機器  
流通形態
  • 化学ソフトウェア学会の無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス,出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他:インターネットで公開
具体的方法

以下のサイトの『計算化学演習』で参照可能。Webページ「生活環境化学の部屋」 http://www2d.biglobe.ne.jp/~chem_env/

1.緒言
 近年計算化学ソフトウェアが多数市販されるようになり,安価なものも増えていることから高校や大学の化学関連科目の基礎演習などでの利用も可能になってきている。しかしながら,計算化学の基礎知識が必要である上にソフトウェア添付のマニュアルがわかりにくい場合も多く,初学者にとってその機能を使いこなすには障害が大きい面がある。
 そこで特に利用者が多いソフトウェアの基本的な使用方法を中心にWebページを作成し,学外にも公開して講義・演習での活用を可能にした。

2.計算化学演習のためのWebページ作成
 市販分子科学計算ソフトウェアの,Chem3D(ver.4.0,CambridgeSoft社),HyperChem(ver.4.5,Hypercube社),Alchemy 2000(ver.2.05,Tripos社),WinMOPAC(ver.2.0,富士通)の5種について操作性の難易などを比較検討し,ChemDrawで2次元の構造式を描いて簡単に3次元分子モデルを作成できるChem3Dを中心に,学内の演習用にWebページを作成して学外にも公開した[1]。
 その内容としては,分子力学法のMM2法,半経験的分子軌道法のAM1・PM3法についての概説と以下のような計算実行例を含んでいる。なお,計算の結果得られた分子モデルは分子表示プラグインのChemscapeChime(MDL社)を利用して,ブラウザ上で立体構造や様々な分子情報を参照できるようにした。

2−1.C.I. Acid Orange 7合成実験と計算化学
 計算化学と化学実験との関連性をもたせる例として,有機化学実験でよくおこなわれるものの一つであるジアゾ化・ジアゾカップリング反応によるC.I. Acid Orange 7(Orange II)合成を取り上げ,反応式や実験操作の実写とともに呈示した。吸光分析やDSC測定の結果も併せて掲載している。

2−2.環境ホルモン関連分子の計算結果例
 多数の化合物について計算して比較検討する例として,近年関心の高い環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)としてリストアップされている分子を取り上げ,上記計算ソフトのほかに定量的構造活性相関解析ソフトウェアなども併用して計算結果を公開した。これは,現在リストアップされている化合物が約70という適当な数であって幅広い分野で研究が進められており[2],計算化学による検討も加えられていることによる。
 図1は,小林らが絶対ハードネスηと絶対電気陰性度χを用いた構造-毒性活性相関によって解析した例[3,4]に倣って,η,χをChem3Dから得られるHOMO,LUMO電子エネルギーから算出し,Alchemy補助プログラムのSciLogPで求めたlog P(Pは水-オクタノール分配係数)とともに,3次元グラフにしたものである。Webページには同じくAlchemy補助プログラムであるSciQSAR(定量的構造活性相関解析ツール)で得られる分子形状なども示し,環境ホルモン関連分子についての詳細を詳しく知ることができるように配慮した。なお,図1中の環境ホルモン優先化合物とは,2000年7月に環境庁が優先的に研究・評価を行うと発表した7化合物である[5]。
図2は天然の女性ホルモン・男性ホルモンについて,ChemscapeChimeによって分子表示したものに計算データを付記したページ画像例である。
図1 χ-η平面上に示したlog P値.log PはSciLogPによる計算値(部分).
図2 分子表示プラグインを用いた環境ホルモン関連分子の表示画面例(天然の性ホルモンの親油性ポテンシャル表示).

3.考察と課題
 本システムは,出典本の問題をなるべく忠実に版を起こしてインターネットで利用できるようにしやものであり,改善する余地は多々あるものと思われる.事実,FD供給でのN88BASIC言語での本システムでは,動きのあるアニメーション機能を有していたが,現システムでは諸問題が解決できずまだ実現していない.これをWWW上で公開することにより,より多くの方々の校正に期待して教育的に価値あるものとしたい.

4.参考文献・Webページ
  1. 本間善夫,『計算化学演習』,http://www2d.biglobe.ne.jp/~chem_env/comchem/bunsi00.html
  2. たとえば,若林明子,「化学物質と生態毒性」,産業環境管理協会(2000)
  3. たとえば,小林茂樹・田中彰・鮫島圭一郎,『環境ホルモンの電子構造はその毒性や生物活性の発現にどのような相関性を持つのであろうか? −ハードネス概念の生物学への応用−』,化学と工業,52(1),42(1999)
  4. 吉村忠与志,『環境ホルモンの毒性をどのように発見するか』,化学とソフトウェア,21(1),11(1999)
  5. 環境庁資料,http://www.eic.or.jp/eanet/end/kento1201.html

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