演 題 HSPを用いた化学データ計測プログラム
発表者
(所属)
粟生 雅人(名古屋市工業研究所)
連絡先 〒456-0058 愛知県名古屋市熱田区六番3丁目4-41
名古屋市工業研究所 資源環境部資源技術研究室
TEL 052-654-9886 FAX 052-652-6776
E-mail
キーワード HSP,RS-232C,データ計測、データ変換、ソフトウェア連携
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
RS-232C出力端子を持つ計測器からデータを取り込み、パソコンで自在に処理することにより、データの中に埋もれた本質的現象や真実を明らかにする。
他ソフト(Excelなど)との連携により、CSV形式データファイルを経由しなくても直接セルにデータを入力するなど、複数のアプリケーションを操作するソフトとしても機能する。
環 境 適応機種名 IBM-PC/AT互換機
O S 名 Windows95/98/2000
ソース言語 HSP
周辺機器 RS-232C出力端子を持つ測定器
流通形態
  • 化学ソフトウェア学会の無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス,出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他:未定
具体的方法

 

1.はじめに
 最近の測定機器はパソコンによるデータ処理が標準で行われるようになり、FDなどの記憶媒体に測定データを出力できるものが増えて、従来に比べて随分とデータの取り扱いが容易になった。しかし、研究室には旧式のアナログ出力しか対応していない測定器も多く、それらの測定データをいかにパソコンに取り込んで処理を行うかという点も未だ重要である。OSがMS-DOSからWindowsに進化し、どの研究室にもWindowsパソコンがあるという時代になったが、Visual BasicやDelphiなどでWindowsプログラムを作成するのは、ソフトウェアの文法や変数の扱いなどを修得するのにかなりの時間を要するため、研究者にとってそれほど容易な事ではない。Windows上でデータを容易に取り扱いたいという研究者の要望に応えるソフトウェアであるHSPによりデータ計測プログラムを作ったので、その内容を紹介する。

2.方法
 HSP (Hot Soup Processor)とは、Windows用のスクリプト言語である。HSPは、ONION software/onitama(http://www.at-m.or.jp/ ̄onitama/)製のフリーソフトで、株式会社ベクターのページhttp://hp.vector.co.jp/authors/VA003112/hsp2dl.htmlからダウンロードできる。
 昔懐かしいBasic言語に近い操作性で、僅か数行のスクリプトを書くだけでWindowsプログラムを実行させることができる。最新バージョンはHSP Ver2.6β4 (2000年9月8日現在)であり改良が加えられつつある。また、基本プログラム以外に一連のHSP機能拡張ソフト群があり、ユーザー自身によるプラグインなどの作成により、独自の機能を拡張できることも魅力である。
 デフォルトのプログラムでは、整数演算しかサポートされてないので、そのままでは科学技術計算には向かないが、プログラム上の工夫や各種プラグインの使用で浮動小数点演算に対応が可能である。

3.測定データの取り込み(シリアルインターフェース利用)
 パソコンに標準的に搭載されているRS-232Cインターフェースを使用して、計測器とパソコンをケーブルで繋ぎ、測定データの取り込みを行った。汎用のA/D変換装置としてカノープス社製のCAD12-4を使用し、入力電圧データをパソコンに取り込んだ。COMポートの条件を指定してopenし、測定レンジの指定、データ取り込みの指定、取り込んだデータの表示からなるHSPプログラムを作成した。
 データ計測中の画面表示を図1に示す。画面表示などは、ユーザーが任意に設計制作できる。わずか数十行のスクリプトを書くだけて、研究者のニーズに合ったデータ計測システムが構築できる。
図1: 計測データ表示画面

4.他ソフトウェアとの連携
4−1.Excelとの連携
 HSPはWindows上のソフトであり、同時に開いた他ソフトのWindowに対してキーコードを送信する機能がある。これをうまく使うと、HSPから他ソフトをコントロールすることができる。測定データは、通常CSV形式のファイルとして一旦保存しExcelなどの表計算ソフトによってCSVファイルを読み込んでからデータ処理を行っているが、HSPを使えば、Excelのセルに直接データを書き込むことができる。ただし、全てのキーコードが送信できるわけではない。この解決策としては、シェアウェアソフトのRocketMouseというキー操作を自動化するソフトを使用すると、望みの操作を全自動化することが可能となる。

4−2.TSSとの連携
 Microsoft社のMicrosoft Text-to-Speech (TTS) enginesを利用すると、パソコンにテキストを読み上げさせることができる。化学ソフトウェア学会のデモで、TSSを使ったプレゼンテーションを行う予定である。

5.まとめ
 スクリプト言語であるHSPを使用することにより、誰でも容易にWindows上でデータ計測プログラムを作ることができる。測定した生のデータを研究者自らが取り扱うことにより、今までブラックボックス的取り扱いしかできなかったデータそのものを自在に処理し、データの中に潜む現象の本質に迫ることが可能となる。

6.参考文献
1. おにたま・悠黒喧史・奥山喜正 HSP Windows95/98/2000 プログラミング入門 ISBN 4-87966-972-5 株式会社秀和システム,2000.

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