演 題 硫化物蛍光体の発光スペクトルと結晶構造の相関性
発表者
(所属)
○奥清高,岡本洋和,*八島勇,野口文雄,小林秀彦 (埼玉大学工学部,*三井金属総研)
連絡先 〒338-8570 埼玉県浦和市下大久保255 埼玉大学工学部
TEL/FAX:048-858-3536
E-mail:
キーワード Electro luminescence,Crystal structure, Coordination polyhedron
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
 青色EL(Electro luminescence)材料として有力なチオガレート,およびチオアルミネートの結晶構造をそれぞれ可視化した.アルカリ土類金属を配位中心原子とし,Sを頂点とする配位多面体の構造を分類し,これらの母材にCeをドープした際の発光波長との相関性を調べた.
環 境 適応機種名 PC98シリーズ,DOS/V
O S 名 Windows95/98/NT
ソース言語 Inprise社Borland C++ Builder5
周辺機器 特になし
流通形態
  • 化学ソフトウェア学会の無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス,出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他:未定
具体的方法

 

1.目的
 現在,新しいディスプレイの材料として,EL素子が注目されている.広い視野角,高コントラスト,超薄型,長寿命などの特徴を持ち,幅広い応用が期待されるが,青色発光の高機能EL材料がないため,フルカラー画像表示が困難である.青色発光EL材料として有望なチオガレート(MS)m(Ga2S3)n:Ce(M:アルカリ土類金属)およびチオアルミネ―ト(MS)m(Al2S3)n:Ceは,MのサイトにCeをDopeすることで青色発光する.そこで,Mサイトを配位中心とした配位構造を可視化し,結晶構造と発光波長との相関性について検討した.

2.配位多面体による結晶構造の可視化
 チオガレート,チオアルミネートにおけるGa3+,Al3+の各サイト周辺に存在するSを頂点とする配位多面体(配位中心原子:M)表示を行ったところ,4つの型に分類出来た.
8配位多面体6,12配位多面体5配位多面体12配位多面体
Fig.A CaAl2S4Fig.B BaAl2S4Fig.C BaAl4S7Fig.D BaGa4S7

3.結晶構造と発光波長の関係
 チオガレートおよびチオアルミネートにおける格子パラメータとCe3+の発光ピーク波長(λ)の関係をそれぞれ表1,表2に示す.
 一般式(MS)m(Ga2S3)n,(MS)m(Al2S3)nにおいて, M元素のイオン半径がCa2+(0.990Å),Sr2+(1.160Å),Ba2+(1.360Å)と大きくなると, その発光波長は短波長側にシフトすることが分かった.アルカリ土類金属のMサイトを発光中心のCeに置換した場合は,m:nが変化しても,ほとんど発光波長は変化しない(表1).チオアルミネートにおいても同様に,M元素のイオン半径が大きいものでは短波長側にシフトし,m:nが変化してもほとんど発光波長は変化しない(表2).m:nが同じ場合,チオガレートはチオアルミネートより発光波長が長くなった.

表1 チオガレート材料の結晶構造と発光波長
HostFig.a(Å)b(Å)c(Å)γCrystal systemλ(nm)
CaGa2S4A20.0920.0912.1190.0Orthorhombic475
SrGa2S4A20.8420.5012.2190.0Orthorhombic470
BaGa2S4B12.6612.6612.6690.0Cubic455
BaGa4S7D14.77 6.2411.1690.0Orthorhombic470

表2 チオアルミネート材料の結晶構造と発光波長
HostFig.a(Å)b(Å)c(Å)γCrystal systemλ(nm)
CaAl2S4A20.1620.0512.0390.0Orthorhombic437
SrAl2S4A20.8220.3612.1290.0Orthorhombic430
BaAl2S4B12.5912.5912.5990.0Cubic430
BaAl24/SUB>S7C14.81 6.22 5.8990.0Orthorhombic425

4.まとめ
現段階では,当初予測したような配位構造と発光波長との相関性は認められず,Ce添加によるチオガレートおよびチオアルミネートの青色発光の波長は,むしろアルカリ土類金属(M)のイオン半径に依存することが分かった.


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