演 題 有機化合物命名法ITSの構築(2)−課題化合物の生成法−
発表者
(所属)
○中山伸一、小松幸子、吉田政幸(図書館情報大)
連絡先 〒305-8550 茨城県つくば市春日1-2 図書館情報大学
TEL:0298-59-1342
E-mail:
キーワード  
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
有機化合物の命名法を教える知的教育システムに必要な、問題の自動作成システムの構築法を提案し、部分的なインプリメントを行った。
環 境 適応機種名  
O S 名  
ソース言語  
周辺機器  
流通形態
  • 化学ソフトウェア学会の無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス,出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他:未定
具体的方法

 

1.はじめに
 化合物の構造からその名称を正しくつけられ、かつ化合物名からその構造を正しく思い浮かべられなければ、化合物情報を正確に伝達することはできない。その意味で化合物命名法の教育は化学の情報流通に重要な役割を果たす。
 我々は有機化合物の命名という複雑な規則を教えるシステムとして、知的教育システム(ITS)を用いることを考え、その基本構想を提案した[1]。その際、教育した知識の獲得状況を把握するために課題化合物を自動生成するシステムが重要な要素であることを示し、アルゴリズム的な生成法についての検討結果を述べた。ここでは、より柔軟な課題化合物の作成方法の検討について報告する。

2.課題化合物作成のための戦略
 化合物構造を複数の部分構造(コンポーネント)の構成物と考える方法は種々の情報化学システムで使われている。本システムにおいてもこの方法を導入し、まず要求される課題レベルに応じた部分構造の集合を創出し、それらから全ての可能な構造を作り出し、最後に要求される条件を満たす構造を選ぶという方法を考えた。その実現のために要求解析、構造創出、構造検査の3つのプロセスが必要である。ここでは、非環式炭化水素化合物を対象としてこれらのプロセスの検討を行なった。

3.要求解析
 どのような課題化合物を作成しなければならないかは、命名法の学習がどのステップに進んでいるかによって異なる。表1に非環式炭化水素化合物の教育において用いられる学習レベルを表現するのに必要な属性と属性値を示す。

表1 課題化合物を表現する属性(属性値)一覧

分岐(有、無)、側鎖数(単、複)、側鎖の種類(単純、複合、混合)、側鎖の最長鎖数(単、複)、含最多側鎖側鎖数(単、複)、同種の単純基(単、複)、同種の複合基(単、複)、最長鎖数(単、複)、分岐位置(片寄り、両端同位置、対称)
側鎖の不飽和結合(有、無)、側鎖の含最多不飽和結合鎖数(単、複)、最長側鎖数(単、複)
不飽和結合(有、無)、不飽和結合数(単、複)、三重結合数(単、複)、不飽和結合位置(片寄り、両端同位置、対称)、二重結合位置(片寄り、両端同位置、対称)
含最多不飽和結合鎖数(単、複)、含最多二重結合鎖数(単、複)

この各々の属性値について、そのとり得るコンポーネントの種類と制限事項をまとめた。その数例を以下に示す。

分岐(無) a+e+i=2,c=d=g=0
分岐(有) a+e+i≧3,c+d+g>0,a+e+i−(c+2d+g)=2
三重結合数(単)  i+j=2

なおここで用いるコンポーネントは、表2に示す10種である。

表2 炭化水素化合物を構成するコンポーネント
 (a)CH3−  (b)−CH2−  (c)−CH<  (d)>C<  (e)CH2=  (f)−CH=  (g)>C=  (h)=C=  (i)CH≡  (j)−C≡

4.構造創出
 コンポーネント群からその可能な構造を創出する方法として、結合スタック法を用いることとした[2]。なお、構造は全てのコンポーネントを使って創出するものとする。

5.構造検査
 創出された構造が課題として妥当なものであるかを調べるには、表1の属性値を決定する必要がある。非環式炭化水素の場合に最も重要な情報は構造の主鎖と側鎖の情報である。ここでは、結合成分だけからなる構造スタックを考え結合スタック法を応用して、主鎖候補を求める方法を考案した。さらにこの方法を用いて側鎖候補も求めることができる。主鎖、側鎖候補が決まれば、その場合の側鎖位置や不飽和数、不飽和位置などは容易に求めることができ、どれを主鎖にとれば良いのか、どれを側鎖にとれば良いのが定まる。

6.システムのインプリメント
 上記の考えに従って、各要素システムを構築中である。

7.参考文献
[1]中山ほか, 第19回情報化学討論会講演要旨集, 96-99 (1996).
[2]Kudo, Sasaki, J. Chem. Inf. Comput. Sci., 16(1), 43-49 (1976).

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