演題 3次元医薬品構造データベースの構築
発表者
(所属)
○土橋 朗
(東京薬科大学薬学部)
連絡先 〒192-0392 東京都八王子市堀之内1432-1 東京薬科大学薬学部
TEL: 0426-76-3082, FAX: 0426-70-7067, E-mail:
キーワード 分子モデリング、分子力学、分子動力学、医薬品構造、データベース
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
日本薬局方収載医薬品の最安定コンホマーを3次元構造データベース としてWWWホームページに掲載し、さらに最安定コンホマー検索の 過程で得られた分子の運動性をアニメーションとした。
環境 適応機種名 下記のOSをサポートする機種
OS 名 MDL Chemscape ChimeをプラグインとするNetscape  Navigator 3.0以上が機能するMacOS, Windows95あるい はNT、およびSGI IRIX 5.Xや6.X
ソース言語 HTML
周辺機器 なし
流通形態
右のいずれ
かに○をつけ
てください)
  • 化学ソフトウェア学会の
    無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス、出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他
  • ○未定
具体的方法
インターネットを経由して全て の医薬品の座標情報はPDBファ イルフォーマットで入手できる

1 はじめに

 医薬品としての有機化合物の3次元構造をデータベース化することを目的として、現 在までに第13改正日本薬局方に収載された単一成分からなる353種の医薬品の最安 定コンホマーと分子動力学計算に基づく分子運動のアニメーションをWWWホームペー ジ (http://www.ps.toyaku.ac.jp/~dobashi/)に掲載し、公開した。
 有機化合物のデータベースはSTN/Registryに代表される網羅的で多様な情報を包含す るものを始めとして、種々の有機化合物の生物活性と3次元構造や、 有機化合物の合 成法、代謝、あるいは安全性など、それぞれの領域に焦点を絞ったデータベースも数多 く編集されている。中でも有機化合物(あるいは医薬品)の3次元構造は、その生理活 性との相関をQSERなどの手法で探索するための重要な情報であり、MDDR-3Dや Comprehensive Medicinal Chemistry-3D (MDL Information System Inc.) などの網羅的な市販 データベースや、The WWW Chemical Structure DatabaseなどのWWWサイトから入手する ことができる。しかし、市販データベースは非常に高価であり、またインターネット上 で公開された構造情報は必ずしも汎用される医薬品に特化されたものではない。

2 データベースの概要

 本データベースは医薬品に焦点を絞り、日本医薬品集の収載する汎用医薬品およそ1 000種を目標に、その構造の最適化をMacroModel4.5 (Columbia University, Department of Chemistry, New York) に組み込まれたMM2(パラメータ不足の時のみAMBER)力場を 用いて行ったものである。各医薬品の最安定コンホマーは、まず回転可能な二面体角に 対してモンテカルロシミュレーションを行った後、真空中300Kに加熱し、100psの間に 100個のコンホマーをサンプリングし、構造最適化した。ここで得られた最も安定なコ ンホマーを最安定コンホマーとして、その座標情報(MacroModelファイル形式)を PDB ファイル形式に変換してWWWホームページに掲載した。このファイルはMDLのプラグ インChemscape Chimeによって描画され、インターネット上で自由に回転や拡大、平行 移動を実行できる。描画時のスナップショトを左図に示す。 また、全ての医薬品の構造最適化の過程で行った分子動力学計算を視覚的に表示する ため、サンプリングした複数のコンホマーの座標情報をxyzファイル形式に変換し、 Chemscape Chimeにより連続表示し、アニメーションとした。

3 おわりに

 本データベースでは全ての医薬品の最安定構造に関するPDBファイルを自由にダウ ンロードできる。医薬品の構造と活性の相関の探索するため、あるいは分子錯体の形成 に係わる超分子化学におけるモデリングのために、初期座標として利用されること(さ れていること)を望んでいる。
 また、医薬品の3次元構造に関する立体化学を学習すること、あるいはアニメーショ ンを眺めることで分子の運動性を学習することなどにも活用できると考えている。