演題 構造活性相関による化学物質安全性予測システム CAESAR の開発
(第5報)―システムの全体設計
発表者
(所属)
○田辺 和俊,松本 高利
(物質工学工業技術研究所)
連絡先 〒305 茨城県つくば市東1―1
TEL : 0298-54-4432, FAX : 0298-54-4432
Email : ,
キーワード 化学物質の安全性,構造活性相関,safety or potential hazard for chemical substances,QSAR
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
構造活性相関の手法(パターン認識と多変量解析)を用いて,新規化学物質の安全性について事前評価を行うことが可能となる.
環境 適応機種名 DOS/Vマシン
OS 名 Windows NT 4.0
ソース言語
周辺機器
流通形態
右のいずれ
かに○をつけ
てください)
  • 化学ソフトウェア学会の
    無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス、出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他
  • ○未定
具体的方法

1.緒 言

 新規化学物質が続々合成されて,我々の周囲で数多く利用されている.その一方において,新規化学物質の安全性が大きな問題となってくる.新規化学物質の安全性を評価するためには,多大な費用と時間が必要とされる.そこで,現在薬物設計開発で使用されている構造活性相関の手法を用いて,新規化学物質の安全性―つまり新規化学物質の潜在的な毒性の危険性の予測を行うことができれば,合成・製造を行う前にその化学物質の安全性を事前に評価することが可能となる.
 本研究においては,化学物質の安全性予測のみならず包括的な化学物質の毒性予測データベースの構築を目指すものである.今回は,構造活性相関による化学物質安全性予測システム CAESAR (Computer-Aided Evaluation of Structure Activity Relationship )の全体構成概要について主に述べる.

2.概 要

 この構造活性相関による化学物質安全性予測システム CAESAR は,大きく分けて2つの構成モジュールから構成され,大きくデータベースモジュールと化学物質安全性予測モジュールからなる.前者は,主として過去に実験結果が存在する場合において全ての実験データの表示を行う.また,このシステムを用いて行なわれた予測結果についても表示することが可能である.後者は,薬物設計開発で用いられている構造活性相関の手法の1つであるパターン認識と多変量解析を用いた3次元的解析を行うモジュールである.このモジュール部分については,既に幾つかのアプリケーションソフトになって市販されている.その中でも有名なソフトの1つとして,種々の毒性予測システムを持っている TOPKAT ( Health Designs, Inc. 製 ) がある.TOPKAT は,公表されているデータでの再現性が極めてよく,しかも数々の毒性について瞬時に予測結果が出る.しかしながら,TOPKAT は2次元的予測システムであるがゆえに,分子の立体構造や配座等の立体的な因子を考慮することができないという欠点を持っている.言い換えれば,3次元的特性を考慮できないがために,平面系に近い分子での毒性予測はよいが3次元的分子での毒性予測があまり芳しいものではないという結果となっている.そこで安全性予測システム CAESAR では,分子の3次元的要因も組み込んだ予測システムを構築する.
 このシステムを用いてある化学物質の予測されるであろう毒性情報を知りたい場合,まず最初に既存の実験データベースの検索が行なわれ,実験データベース上に毒性情報が存在する場合には,その化学物質の情報を表示を行う.また同時に以前に行なわれたことがある推定結果も表示される.しかしその化学物質の情報が実験データベースに含まれていない場合には,薬物設計開発で用いられている構造活性相関の手法を用いて化学物質の毒性について予測を行う.この化学物質安全性予測システムの特徴として,毒性予測される毎にデータベースライブラリーが自らを自己増加させることができ,一度予測を行ったものについてもデータベースに自動的に追加される.そのため,一度予測を行えば再度予測を行わなくてもよいというメリットがある.
 また,それぞれについて単体のモジュールとして活用をすることも可能である.実験データベースについては,過去の実験データを重視している.もう一方の化学物質安全性予測システムのモジュールについては,先の実験データベースとは切り離して利用すれば,従来行なわれている構造活性相関の手法を用いた毒性予測システムと同等に活用することが可能である.


化学物質安全性予測システム CAESAR の構成概略図