演題 2-ピリジル基を有するベンゾジキサンテン類縁体の電子状態と吸収スペクトル
発表者
(所属)
○時田澄男,渡部智博,古後義也
(埼玉大)
連絡先 〒338 埼玉県浦和市下大久保255 TEL&FAX : 048-857-9653
     埼玉大学工学部応用化学科  E-MAIL :
キーワード ベンゾジキサンテン,PPP分子軌道法,AM1分子軌道法,INDO/S分子軌道法,電子スペクトル,分子設計,フォトクロミズム
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
開発意図適用分野期待効果特徴など  分子内にねじれ構造を持つフォトクロミック化合物に対し,種々の分子軌道法の計算を行い,実測値と比較してそれぞれの特色について検討した.
環境 適応機種名 PC98シリーズ,GATEWAY2000,INDIGO
OS 名 MS-DOS Ver 3.3,Windows95,UNIX
ソース言語 N88BASIC,FORTRAN
周辺機器 特になし
流通形態
右のいずれ
かに○をつけ
てください)
  • 化学ソフトウェア学会の
    無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ○ソフトハウス、出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他
  • 未定
具体的方法
PPP分子軌道法計算プログラムは,PPP-PCの商品名で丸善(株)より市販されている.

1. 目的

 ベンゾ[1,2,3-kl:4,5,6-k'l']ジキサンテン(1a)1)とその類縁体は,着色型(1)と無色型(2)の間の可逆応答を示す典型的なフォトクロミック化合物である.我々は,これまで,1a とその類縁体の分子設計と合成を行ってきた2, 3)1aはX線結晶構造解析の結果,ねじれ構造を示した4).そこで,これらの電子スペクトルを,平面分子を対象とするPPP法と非平面分子を対象とするINDO/S法で計算し,両者の特徴を比較検討した.

2. 方法および結果

 1a-1h の化合物について,母体骨格には平面構造,N-Ph基のC-N結合にはねじれ構造を仮定してPPP-PC5) による分子軌道法計算を行った.また,AM1法6)によって構造最適化を行い,INDO/S法7)から吸収極大波長を計算した.
 電子スペクトルの吸収極大波長の実測値と計算値との相関を,図1に示す.
 目的とする化合物では,PPP-PC分子軌道法による計算の結果,吸収極大波長の計算値と実測値の絶対値が 1a を除いてたいへん良く一致していた.また,AM1-INDO/S分子軌道法では,計算値は実測値より高エネルギー値を示したが,計算値と実測値との間には,良い相関関係のあることがわかった.


文献

1) R. Schmidt, W. Drews and H. D. Brauer, J. Photochem., 18, 365 (1982).
2) S. Tokita, T. Watanabe, Y. Fujita, H. Iijima and S. Terazono, Mol. Cryst. Liq. Cryst., 297, 269 (1997).
3) T. Watanabe, G. Yamakawa, S. Tokita and H. Nakahara, J. Photopolym. Sci. Technol., 10 (2), 255 (1997).
4) Y. Kobayashi, S. Mochizuki, H. Yoshioka, K. Nakatsu, T. Arai, T. Ishii and S. Tokita, Proc. 2nd International Symp. on Chem. of Functional Dyes, Kobe, p. 425 (1992).
5) 時田澄男,松岡賢,古後義也,木原寛,「機能性色素の分子設計―PPP分子軌道法とその活用」,丸善 (1989).
6) M. J. S. Dewar, E. G. Zoebisch, E. F. Healy and J. P. Stewart, J. Am. Chem. Soc., 107, 3902 (1985).
7) J. E. Ridley and M. C. Zerner, Theor. Chim. Acta., 32, 111 (1973); A. D. Bacov and M. C. Zerner, Theor. Chim Acta., 53, 21 (1979); M. C. Zerner, G. H. Loew, R. F. Kirchner and U. T. Mueller-Westernhoff, J. Am. Chem. Soc., 102, 589 (1980).