演題 PROLOGによる分子の構造式表現とその利用
発表者
(所属)
○中西雅通、矢野敬幸
(一橋大学化学研究室)
連絡先 〒186 国立市中2−1 一橋大学 化学研究室 TEL:0425-80-8930
                               FAX:0425-80-8965
キーワード PROLOG, constitutional formula, topological chemistry
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
非計算用言語であるPROLOGの化学分野における応用とその有効性の検討
環境 適応機種名 NEC PC-9800シリーズ
OS 名 MS-DOS
ソース言語 Prolog-KABA
周辺機器
流通形態
右のいずれ
かに○をつけ
てください)
  • 化学ソフトウェア学会の
    無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス、出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他
  • ○未定
具体的方法

はじめに

 人工知能開発言語のひとつとしてprologがある。この言語の特徴として、Ba sicやPascal、Cなどの言語と較べると、計算は苦手だが論理的判断は得意と 言うことが出来る。この種の言語が化学分野にどの程度有効か、あるいはどのような化 学分野なら有効であるのか大いに興味のあるところである。本報告では、分子内の原子 間のつながり情報を記述し、それらの入力データに対して各種の操作を加えることで分 子のトポロジカルな諸性質や化学的情報を導出することについて種々検討した。

つながり情報の記述とプログラム概要

 分子内における原子同士の結合関係をPrologで記述する自然な記法はリストと して表現することである。 例えばメタノールは [C,[H/1],[H/2],[H/3],O,H/4] のように 表される。 しかしこの記法に対する操作が幾分複雑となるので、ここでは結合関係を すべて抜き出してリストとする記法を採用した。すなわちメタノールでは [C-H/1,C-H/2,C-H/3,C-O,O-H/4] となる。
 分子内のつながり情報をこの記法で記述し、これに対して様々の操作を加えることで 以下のような結果を導き出すプログラムを開発した。なお現時点では環状構造を持つ分 子は除いておく。
1.主鎖を見つけること。入力された結合関係のリストから分子内の全原子の単純リ ストを作成する。これらのリストを用いてプログラムを作る。これは以下のほぼ全ての 述語に共通する手続きである。そして、水素原子と、主鎖の端にはなり得ない原子を除 くすべての原子から、ひとつひとつ結合を辿って行き、最終的にもっとも長い鎖を主鎖 とする。
2.分子内に指定の部分構造があるか無いかを判定する。各部分構造ごとにキーとな る原子を定め、それと同じ原子をしらみつぶしに調べてゆく。キー原子は構造を入力す る際に最初に書かれた原子とする。
3.隣接行列1,2)を作成すること。やはり原子のリストを作り、総当たりでそれぞれ の原子どうしに直接の結合が存在するか否かを調べる。存在すれば1、存在しなければ 0を返し、最終的に画面上に行列の形式で結果を出力する。
4.距離行列1,2)を作成する。原子どうし総当たりで、結合を辿って行ける最短のルー トの長さを調べ、行列の形式で画面表示する。
5.Z-index1)を作成する。指数ZはZ=Σp(G,k)として求める。ここで p(G,k) の値は, 組み合わせ理論における包除原理 p(G,k)=p(G-l,k)+p(GΘl,k-1)を利用して計算する。すな わち分子内の分岐箇所で切断して全ての断片が直鎖になるようにして求める。このよう にしてN個の原子を持つ分子に対して k=N/2 まで調べる。グラフの評価上水素原子は無 視して考える。これも結果は画面出力される。

おわりに

 Prologの特長をうまく利用できたのはやはり主鎖や部分構造を見つける作業で あった。一部分をが共通であるような別解を多数数え上げる作業ではPrologのバッ クトラック機能が多いに有用である。その特性はZ-index を求める際にも有効であった。 一方、距離行列や隣接行列については、通常の計算用言語との優劣に差はなかった。
   利用できる述語の形式
    ・principal_chain(入力データ、主鎖、その長さ)
 
    ・substruct(調べる分子のデータ、部分構造のデータ)

    ・adjacent(入力データ)

    ・distance(入力データ)

    ・z_index(入力データ)

文献

1)細矢治夫 「化学構造表現の数式的表現」, 化学総説, No.18, pp.27-46, 1978.
2)N. Trinajstic "Chemical Graph Theory", CRC press,Inc., 1983