演題 分子動力学計算プログラムAMBERの実行支援ツールの開発
発表者
(所属)
〇松久 茂、 林 治尚、 山名 一成、 中野 英彦 (姫路工大%工)
宇野 健 (広島県立大)
連絡先 〒671-2201 姫路市書写2167 姫路工業大学工学部応用化学科
TEL 0792-66-1661
キーワード Modrast-P, AMBER, 汎用型ワークステーション, Molda
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
AMBERのデータベースに登録されていない残基の入力ファイル作成を簡略 化する機能、出力データの可視化、グラフ作成のためのデータ取得機能を Modrast-Pに追加した。この機能を用いる事により汎用型のワークステーシ ョンでも、シミュレーション・計算結果のグラフィック表示を一連の処理と して行う事ができ、視覚的に計算結果を考察することが容易になった。
環境 適応機種名 X-Windowを備えている機種
OS 名 UNIX(Hp-ux)
ソース言語 C言語
周辺機器
流通形態

右のいずれ
かに○をつけ
てください)

  • 化学ソフトウェア学会の
    無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス、出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他
  • 〇 未定
具体的方法

1. はじめに

 近年、コンピュータの性能が飛躍的に進歩した事により、汎用型のワークステーションやパソコンな どでも、計算量の多い分子動力学計算(以下MD計算)が行われるようになってきた。このような現状 のなか、高性能で高価なワークステーションではMD計算などの実行支援プログラムは紹介されている が、大学の研究室でよく使われている汎用型のワークステーションに対応したものはあまり紹介されて いない。我々の研究室では、汎用型のワークステーション上で分子の立体構造図示システムを開発して おり、数年前よりProtein Data Bank(以下PDB)のデータに対応した図示システムModrast-P1) を本研究討論会において発表してきた。本年度は、Modrast-Pにタンパク質や核酸の構造の解析などによく 用いられている分子動力学計算プログラムAMBER2)の操作性を向上させる機能を付け加えた。
 我々の研究室では、化学修飾した核酸のMD計算を行っているが、この場合AMBERのデータベースに登録さ れていない修飾された残基についてMD計算を行う必要があり、AMBERの機能だけでは計算に用いる入力ファイル の作成、計算に用いる初期構造のモデリングなどの作業が非常に困難である。そのような困難な作業を少し でも簡単に出来るように、以下の機能拡張を行った。入力データを対話形式で簡単に作成できる入力データ 作成支援機能、分子内回転・原子削除・分子接続などを行うモデリング機能、出力データを立体構造図・ アニメーションとして表示するための可視化機能である。これらの機能を付け加えたことによって、 Modrast-PからAMBERの入力ファイルの作成・MD計算・計算結果の可視化が簡単に行えるようになった。


2. プログラムの概要

入力データ作成支援機能

 AMBERでMD計算を行う場合、図1のような流れで計算を行っていく。それぞれのモジュールには、 入力ファイルが必要で、テキストエディタ等で作成しているが、書式指定等の操作が煩雑である。 今回作成した支援機能を使用する事によって、対話形式で画面の指示に従って入力する事により 自動的に入力ファイルを作成することが出来る。

 

モデリング機能

 AMBERに登録されていない修飾された残基の計算を行う場合、PREPで残基の構造に関する定義を行わ なければならない。PREPに必要なデータは、座標データ、形式電荷値である。そこで、PREPに必要な データの取得、入力を自動的に行う機能をModrast-Pに追加した。この機能では、Molda3)を 用いて作成した残基の初期構造のデータを読み込み、自動的にMOPAC4)の入力ファイルを作成し、 続いてMOPACの計算を行い、出力データから最適化された座標データおよび形式電荷値を取得し、 PREPの入力ファイルの作成を行う一連の過程を実行することが出来る。
 修飾されたDNA二重らせんをAMBERで計算する場合、AMBERに組み込まれている標準的な核酸の配列から 二重らせん構造を自動的に発生するモジュールNUCGENによって作成された二重らせん構造の一部を上記の 新たにPREPに登録した修飾残基で置換することによって、初期構造を作成することが出来る。さらに、 Modrast-Pに追加した部分回転機能によって、置換基のコンホメーションを変化させ、例えば置換基を 塩基対の間にインターカレートさせた構造を初期構造として計算させることが可能となった。

出力データの可視化機能

MD計算の出力ファイルには、色々な情報が盛り込まれている。しかし、大量の数値データから必要 な情報を読み取り、理解する事は非常に困難である。そこで、任意のデータを抜き取って、それをステ ップ毎にグラフ作成が可能なフォーマットでファイルを書き出す機能、Modrast-Pの分子グラフィック 機能を利用して出力データの可視化、アニメーションなどのグラフィック表示が行える機能を追加した。 グラフ作成ファイルは、温度、トータル%エネルギー、ポテンシャルエネルギー、運動エネルギー、 時間、ステップ数を組み合わせて作られる。グラフィック表示機能は、出力データのトラジェクトリ・ ファイルの数値データを全て読み込み、座標データをModrast形式に変換する事によって立体構造の表示 やアニメーション表示を行う。

参考文献

(1) 宇野健、河島康弘、中野英彦他、化学ソフトウェア学会 ‘96研究討論会要旨集、104
(2) P. Kollman, AMBER Ver4.1,University of California
(3) 吉田弘、松浦博厚、化学ソフトウェア学会 ‘96研究討論会要旨集、204
(4) J. J. P. Stewart, MOPAC Ver6.0,QCPE #455