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「創薬」を目指して

呉羽化学工業株式会社 生物医学研究所長 谷中 幹郎

(2004年12月15日 会告Vol.3, No.4)

「創薬」を目指して取り組んできた。「コンピュータ化学」との関わりを主題にして考察してみたい。

製薬企業の統合合併が進み、大規模化している。300万ヶ以上の自社化合物ライブラリーを有し、HTSでヒット化合物を見出すという力づくが行われるも、画期的新薬は低減し、大企業でも開発品目の半数は導入品という。ランダムの力づくの研究では新薬は生まれないという考え方が定着しつつある。ランダムからの脱却のためには「コンピュータ化学」が威力を発揮する。「コンピュータ化学」を駆使して画期的新薬を生み出すというベンチャーが数多く出現している。力のあるベンチャーが開発候補品を生み、大企業が商品化/全世界販売という流れがある。

経営者の「選択と集中」「グローバル展開」「時間軸」「スピード」を合言葉にして切磋琢磨している。スピードを上げるためには、無駄な実験の排除が肝要になる。やってみなければ分からないことだけを実験で確かめる。実験先導型から予測先導型への転換、等、言及され続けてきた。創薬の場合、薬理活性主体で考えがちだが、活性だけでは新薬にならない。構造活性相関は今やLBDD/SBDD共に定法となり、極めてロジカルに行えるようになってきたが、構造動態相関、構造安全性相関は未だ未だで、予測先導型には程遠い。優れたソルーション開発が期待されるも、感性豊かなメディシナルケミストの活躍の時代が続く。できるだけロジカルな地道な努力の継続によって、偶然の発見に出会いブレークスルーが達成され飛躍に繋がる。

ゲノム解読後の医薬の標的蛋白は1000~2000種と言われている。ヒトゲノムは3万前後とされるが、未だ未解決で数倍増大するとも言われる。遺伝子ノックイン、ノックアウト、ノザンブロット、siRNA等の技術を駆使して、ターゲットバリデーションを行い、疾患関連蛋白の発見に鎬が削られている。SNPs解析により遺伝子多型個体差が判明し、オーダーメード医療への発展が期待される。全ての解析は「コンピュータ」の進歩に連動している。これら遺伝子/蛋白の解析場面でも「コンピュータ化学」の更なる活躍が期待される。イレッサ、グリベック等の低分子、ハーセプチン、リツキサン、レミケード等の抗体医薬の成功によって、分子標的薬剤の概念が定着化した。「コンピュータ化学」なしに新薬開発はあり得ない。

「何を」「どうやって」創るかが30年前筆者の命題だった。事務計算用メインフレームを休日使用させてもらい、構造活性相関把握のために、土日2晩徹夜して紙テープを糊でつなぎ併せて入力データとしCNDO/2計算を行った。今思うとあまり意味のない計算だが懐かしい。モノができないと発明に至らないので「有機合成経路設計システム(strategy)開発」に携わった。反応検索システム(tactics)を駆使することで創薬/合成は遂行可能になったように思われる。しかし、天然物全合成問題(企業では扱う機会が少ない)や、有機合成天才偉人の頭脳を後世に伝えるためには、より体系化したstrategyシステムが必要と思う。

福井謙一先生のお言葉、「生物の現象を化学の言葉で、化学の現象を物理の言葉で、物理の現象を数学の言葉で理解する。境界領域の学問が重要」が強く印象に残っている。「コンピュータ化学」に基づく発想がアイデアを生む。アイデアを出せる人材を何人育てられるかを考え、実験に従事してきた研究者には「コンピュータ化学」入門を勧めている。若い研究者が、筋のよい研究課題を見出し(出会い)、「コンピュータ化学」に精通/活用し、感性を大いに磨いて創薬研究開発に成功して欲しい。

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